第5話「一人夜を抜けて」

高知への足取りは重く、

ニンニクラーメンを食べ、羽田へ向かう。敗れた訳ではない、ここが求めていたんだと言い聞かせる。今ある場所で咲きなさいと、よく人は言うけれど、割り切れぬ思いも未だある。

岩村は思う。何にやるせなさを感じているのか。具体的な言葉では表現しにくい。今はニンニク臭とアルコール臭を機内にまき散らしながら、深夜便の離陸の瞬間を待つ。

CAの笑顔すら、岩村には軽蔑しているように見えた。たった一時間強のフライトで、僻地へ身体は運ばれる。長過ぎた春を、気づかないフリをしていたのかもしれない。

リョウマ空港へ到着するまで、

いつしか岩村は眠っていた。

ニンニクラーメンが血糖値スパイクを引き起こし、陰鬱な気持ちを包み込み、ぐっすり落ちていた。

空港から須崎までの道は真っ暗であったが、不思議と身体は軽かった。

タクシーでの移動中、ふと同僚の言葉が思い出される。


正直に言うと、

君の傷の痛さは分からない。

だから僕は、一生懸命その痛みを想像するよ。

それでも、僕が想像する痛みの十倍以上、君はきっと辛いのだろう。

だからその痛みを、僕に話してくれよ。


岩村は話せなかった。ビール片手に頷いてみたものの、なぜか歯に挟まった枝豆の欠片に意識を奪われていた。けれども、何か話せば良かったと今は思う。

須崎の朝、それは快晴であった。沖縄でもないのに、海がやけに明るい。

岩村は防波堤で、小舟の行方を見守っている。

片隅には黒猫が一匹、毛繕いをしており、岩村は意味もなく、ニャァと掠れた声で呟く。

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