②ずっと一緒にいたかった-ほのかちゃんが残したもの-

年中さんへと成長を遂げた頃、母親から習い事の提案をされた。

体操クラブ。

跳び箱やマット運動など、基礎的な運動能力を高めるための習い事だ。

「この前ほのかちゃんのママと話してね、これから運動できないと大変だから、

通った方がいいんじゃないかと思って!ほのかちゃんとりんくんは通うんだって。どうかな??」

仲のいい2人が通う。2人との時間が増える。

即決だった。通うしかなくね。

ただ薄々自分でも気づき始めていたのだが、

まわりよりも僕は柔軟性がなかった。運動神経がよくない。

一方、りんくんは真逆で軽々と僕のできないマット運動や跳び箱もこなしていた。

ほのかちゃんは僕と同じで運動があまり得意ではなかったので、

二人三脚で楽しみながら乗り越えていた感覚があった。

幼稚園、習い事、休日も遊びに行ったり。

年少の頃からずっと同じで、

始めて家以外に安心する居場所ができたのだ。


休みの日に遊び終わって、母親の助手席に乗っていた時のことだ。

「ほのかちゃんね、再来週から引っ越すんだって。寂しいけどバイバイしないとね。

少し遠いところに行くから幼稚園は別々になるけど、会おうと思えば会える距離にいるよ。」

その頃の僕は引っ越すことがどんな意味があまりわかっていなかった。

母が「会える」と言っていたので、僕は返事だけして深くは考えていなかった。


母が言っていた再来週が訪れた。

記憶に残っているのは、「お手紙でやり取りしてね」とほのかちゃんのお母さんから言われたことだった。

後に知ることになるのだが、ほのかちゃんの家はお医者さん家庭で、

父方の病院が変わるため引っ越すことになったらしい。

ほのかちゃんもお医者さんになるために、

都心部の幼稚園に通い勉強するとのことだった。

そんな事情も理解していない年中の僕は、

安心する環境が奪われた感覚だけが心に刻まれた。

次第に幼稚園も楽しくなくなり、りんくんは別の友達と遊ぶことが増え、

僕は独りぼっちの泣き虫に戻った。

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