私たちはお天気を操れない

しゃもこ

私たちはお天気には逆らえない

 占いの仕事が途切れた今、私は週に二度、近所の料亭のお弁当を大学病院で販売する手伝いをしている。


 新年最初の診療日である本日、不穏な様子の男性が売り場に現れ、幟やパーテーションをなぎ倒して、そのまま立ち去っていった。


 幸いお弁当は無事で、病院の方々がすぐに片づけを手伝ってくださった。そのとき、ひとりが小さな声で「今日は気圧が不安定だから……」と呟いた。


 病院の方の体感では、感情が荒れやすい人ほど、気圧の変化の影響を受けやすいのだという。その言葉を聞いた瞬間、私は妙に腑に落ちた。


 占いを始めたばかりの頃、生活のために定時制高校の非常勤講師をしていたことがある。勉強が苦手な生徒が多い学校で、某卍の漫画に登場してきそうな生徒がわんさかいたのだが、その中でも忘れられない少年がいた。


 翌日から天気が崩れると予報されているのに、その日だけ異様に晴れている。そんな日は決まって、彼の様子がおかしくなった。


 ふてくされて床に寝転ぶ程度で済むこともあれば、派手に暴れてしまうこともあった。


 今なら思う。彼もまた、自分の内側で起きている変化を、言葉にできなかっただけなのだと。


 私たちは天気を操れない。気圧を変えることもできない。けれど、「今日はそういう日かもしれない」と知ることはできる。


 理由もなく不安になる日がある。身体が重く、心がざわつく日がある。そんなときは自分を責めるより、天気予報を見るように、そっと心を眺めてみればいいと思う。


 今日は気圧が不安定だから。

 その日は、多分、少し自分に優しくしてもいい日なのだ。




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