不動産があると言うと必ず言われることがある。
『「何もしなくても」家賃が毎月入ってくるんでしょう? いいねえ。』
実家は農業の傍ら不動産賃貸をしている。なぜか。うちの実家くらいの規模では農業だけでは食べていけないからだ。これが日本の農家の実態だ。
ここから先はぶっちゃけた話をしよう。実家はど田舎なので1DKのアパートの家賃は月2万円×36室。駐車場代が1室あたり2,500円。単純計算で年間の家賃収入(所得じゃない)は約1,000万円強になる。
実家の場合は、某中小企業が独身寮として一棟丸ごと借り上げてくれているので今のところ空室による収入減はない。ここだけ聞けば、たしかに「いいねえ」である。
そんなうまい話はこの世にあるわけない。
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ところが、不動産経営を勧めるチラシはここで止まってしまう。当然だが、その1,000万円あまりがそのまま手元に残るわけがない。そんなにおいしいなら日本中が借金してでもやるはずだ。
断言する。
そんなわけはない。
まず固定資産税。金額は控えるが三桁だ。これは土地や建物を持っているだけでかかる税金で、この税金を払うためにアパート経営をしていると言っても過言ではない。この固定資産税に関してはその金額の決定の仕方に対して言いたいことが山のようにあるが、それを書いてしまうとエッセイが何本も書けてしまう位だからやめておく。
それに加えて、火災保険、地震保険、所得税、住民税、個人事業税。
忘れてた。不動産取得税。不動産を手に入れるとこれがかかる。
そしてみんな忘れてしまいがちだが、建物は建てたときは新築だが当然ながら古くなる。古くなれば当然あちこち壊れる。古くなくてもあちこち壊れる。それが賃貸。
ではここで、お部屋に入ってみましょう。
玄関ドアが謎にボコボコ。
便器が壊れる。
エアコンが壊れる。
ガスコンロが壊れる。
換気扇が壊れる。
ガラスが割れる。
床に刃傷沙汰でもあったのかって位の傷がつく。
火災報知器が壊れる。
シンクから水が漏れる。
浴槽が謎に割れる。
配管が謎に壊れる。
こうした細々とした修繕の殆どは当然だが保険ではカバーされない。保険会社はそこまで甘くない。こんなものをいちいち全部カバーしていたら保険会社は一瞬で潰れる。
話を戻す。
壊れてから「じゃあ買いましょう」では間に合わないものもある。だから便器やエアコン、一部の配管備品などはある程度の在庫を持っている。在庫はそこにあるだけでお金がかかる。(詳細は割愛)
設置費も必要だ。自分で取り付けられるものは自分でやるができないものは業者を呼ぶしかない。
それだけじゃない。共用部分の清掃もある。郵便物の問題もある。外構の管理や修繕も大家の仕事。
アパートによっては、個別配達されない郵便物が大家のところにまとめて届くことがある。ドカンと届いたそれらを、大家が配って歩くことも少なくない。少なくとも我が家はそうだ。特に最近郵政民営化が進んだ結果としてこのケースが増えている。(宅急便はまだまだ個別配達してくれる。ありがたい。)
まだある。
夜逃げリスクだ。荷物を置いたまま、ある日突然いなくなってしまう。当然金目のものは持っていくから、残っているのはほぼ全部ゴミ。特に期間工の方が荷物をほぼ全部置いていなくなるケースは少なくない。
それらを片付けるのも大家だ。
しかも、置き去りにされた荷物は大家が勝手に処分できるわけではない。法的な手続きを踏む必要がある。その間、荷物を保管する場所も必要になる。片付け費用は正直なところほぼ回収できない。実際何回か片付けたがそれはそれは大変だった。ちなみに業者に頼むと莫大な費用を請求される割にあまりきれいにならない。
突然死のリスクもある。
今のところ実家は社宅として一棟丸ごと借り上げてもらっているので、そのリスクはない。けれど個人に貸すのであれば、そうした可能性も考えなくてはいけない。その場合、自分で清掃できないことも多い。特殊清掃を入れるとかなりの高額になる。当然だ。
そうすると必ずこう言う人がいる。
「どうせどこかに管理をお願いしているんでしょう? 自分でなんかやってないでしょう?」
確かに。管理をお願いすればいい。修繕の手配も入居者とのやり取りもお金さえ払えば任せられる。
お金さえ払えば。もう一度言う。お金さえ払えば。
部屋数にもよるが、管理費は家賃の20%前後。我が家レベルでは管理費を外注するとほぼ何も残らない。大都市圏や首都圏ならお家賃そのものが高いから外注しても得られる部分はあるだろう。
ただここは田舎だ。そんなことをしたら何も残らない。結果的に共用部分や外構部の清掃は実家の両親の毎日の仕事になっていた。
けれど両親も年齢を重ね、できないことが増えてきた。
そこで、隣の料亭でのパートがない日は、車で実家に通い細々とした用事をこなすようになった。給与は受け取っていない。給与を受け取ってしまうと、それはそれでまた面倒なことになるからだ。米や卵や野菜はもらう。ただし、この辺も調子に乗ってもらいすぎると面倒なことになるので、「常識の範囲内」に留めている。
「不労所得」という言葉はどうもこのあたりを省略しすぎている。だから私は不動産に関しては「不労所得」という言葉にかなり違和感がある。本当の不労所得は、株式の収益とか?いや、これだって、かなりの知識と努力が必要だから決して不労じゃないだろう。
話を戻す?
そして、こんな物件を持っていると時々電話がかかってくる。
「売っていただけませんか」
郵便受けには、
「土地・建物を高く買い取ります」
「売却をお考えではありませんか」
というチラシが頻繁に入る。基本的にはそうした業者は全く信用していない。この世においしい話はそうそうない。
そんな最中の「みんなで大家さん」の件だ。報道でご覧になった方もいるだろう。「みんなで大家さん」は、不動産そのものを所有するのではなく、多くの人から出資を集め、不動産事業に参加する仕組みの商品だ。
名前に「大家さん」とついているからなのか、不動産から得られる利益をとても簡単に感じさせるところがある。
「不動産だから安心」
「家賃収入だから安定」
そんな印象を持ちやすい。
私はそんなにうまい話があるのかなと思っていた。
あるわけがない。
結果的に、東京都は2024年6月に「みんなで大家さん販売株式会社」に対して業務停止などの行政処分を行っている。
さらに2026年9月1日、東京都は同社に対して不動産特定共同事業に係る許可の取消し及び指示を行った。大阪府も同日、「都市綜研インベストファンド株式会社」に対して、同じく許可の取消し及び指示処分を発表している。
出資金は、残念ながらほぼ帰ってこない見込みだと言われている。
なのに、同業他社から同様のチラシが入る。「だから不動産投資は危険だ」などと単純に言いたいわけではない。
宝くじでも当たらない限り、何かを得るためには必ずリスクが生じる。不動産に投資するということは、そのリスクも引き受けるということなのだ。
断言できるのは、家賃収入という数字の裏には、必ずその数字を生み出すための何かがあるということだ。最近YouTubeなどでよく見かける、古い物件をリノベーションして家賃収入を得る、という動画。あれは動画の収益があるから成り立っていると、私は思っている。
だって、絶対そんなに儲かるわけないもん。素人がリノベしたものがそんなに長持ちするわけないもん。どうか、みんな騙されないでと言いたい。
この世に存在する本当の不労所得は宝くじの当選金ぐらいだと思う…宝くじ買わなきゃ。
写真はうちの猫です。
おいしい話なんかこの世にはないよと言っています。