第12話 国家からの招集
正式な招集状が届いたのは、
北方防衛線の任務が
一段落した翌朝だった。
白地に、
王国紋章の封蝋。
それだけで、
周囲の空気が変わる。
「……国家級か」
指揮官が、
短く呟いた。
俺は、
封を切る。
内容は簡潔だった。
王都への出頭要請。
理由は記されていない。
だが――
察しはついていた。
三日後、
王都。
見慣れた城門をくぐると、
護衛兵が
無言で先導する。
案内されたのは、
謁見の間ではない。
会議室だった。
重厚な扉の向こうに、
王国の中枢が揃っている。
軍務大臣。
魔導院長。
王直属の鑑定官。
そして、
玉座の横に立つ
国王。
形式ばった儀礼は、
なかった。
国王は、
真っ直ぐに
俺を見る。
「カイン」
名を呼ばれただけで、
背筋が伸びる。
「北方防衛線での
一連の報告は、
すべて目を通した」
「被害が、
少なすぎる」
「説明が、
つかない」
責める口調ではない。
事実確認だ。
「鑑定官」
促され、
老いた男が
前に出る。
「彼のスキルは、
従来の鑑定法では
依然として
評価不能です」
「ただし――」
一瞬、
言葉を選ぶ。
「彼が関与した戦場では、
因果の偏りが
極端に少ない」
「事故、誤作動、
判断遅延……
それらが
発生しづらくなる」
会議室が、
静まり返る。
魔導院長が、
低く言った。
「世界の誤差を
吸収している?」
「あるいは、
補正している」
俺は、
黙って聞いていた。
国王が、
続ける。
「我々は、
君を
戦力として
招集するつもりはない」
「だが――
存在として
必要だ」
はっきりと、
そう言った。
「今後、
国家規模の作戦には、
必ず君を同行させたい」
「地位、
報酬、
拘束条件は
すべて交渉可能だ」
「拒否も、
できる」
選択肢を、
与えられた。
だが、
これは
命令に近い提案だ。
少しだけ、
考える。
俺がいなければ、
誰かが死ぬ。
それが、
分かってしまった以上。
「……一つ、
条件があります」
国王が、
頷く。
「俺を、
英雄扱いしないでください」
一瞬、
怪訝な顔。
だが、
俺は続ける。
「俺は、
前に立つ人間じゃない」
「誰かの功績を
奪うつもりもない」
「ただ、
壊れないように
そこにいるだけです」
沈黙。
やがて、
国王は
静かに笑った。
「分かった」
「君は、
名もない要として
扱おう」
「だが――」
視線が、
鋭くなる。
「世界が
本格的に
壊れ始めた時」
「君は、
最前線に
立つことになる」
それは、
宣告だった。
会議は、
それで終わった。
城を出ると、
王都の喧騒が
耳に戻る。
俺は、
深く息を吸った。
追放された冒険者が、
国家に
必要とされる。
それ自体が、
皮肉だ。
だが――
もう、
逃げる気はなかった。
俺は、
戦わない。
それでも、
世界は
俺を中心に
動き始めている。
均衡を保つ者として。
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