第6話:放課後の処刑人は、嫉妬の炎で卵を焼く
「……佐藤くん。今日の、あの態度は何?」
食堂での一件は校内放送による氷室の呼び出しにより事なきを得た。同日、放課後の生徒会室。窓から差し込む夕日が、氷室会長の美しい黒髪を赤く染めている。 昼休みの狂騒劇から数時間。なんとか星野と二階堂の追撃を振り切った俺を待っていたのは、壁際に俺を追い詰め、じりじりと距離を詰めてくる「処刑人」の、執念深い追求だった。
「あの態度って……俺はただ、おかずを奪い合う皆を止めようと……」 「そうじゃないわ。星野さんに腕を抱きつかれた時、あなた、鼻の下が伸びていた。……0.5ミリくらい」
「測ったんですか!?」 会長は俺の胸ぐらを掴むと、そのまま背後の壁に押し当てた。いわゆる"壁ドン"の状態だが、彼女の瞳は潤み、いまにも泣き出しそうだ。
「……ずるいわ。私だって、本当はあんな風に、人前であなたを独占したい。でも、私は生徒会長で、『処刑人』なのよ……。あんな、芸能界の『ぎゃん』とかいう女に、私の『きゅん』を汚されたくないの」
震える声で告げられた本音。 鉄の仮面を被らなければならない彼女にとって、俺との"お弁当タイム"だけが唯一、自分を解放できる聖域だったのだ。
「会長……」 「佐藤くん。……私に、あーんしなさい。今すぐ、あの女たちの記憶を上書きするくらい、甘いやつを」
俺は慌てて、残り物の卵焼きを一切れ差し出した。彼女はそれを待ちきれないように、小さな口で「はむっ」と食いつく。
「…………っ、きゅん…………っ!!」
その瞬間、彼女の目からポロリと一粒の涙がこぼれた。 「美味しい……やっぱり、佐藤くんのじゃなきゃダメ……。ねえ、責任取ってよ。私をこんな体にした責任……」
顔を赤らめ、俺のシャツのボタンを指先で弄ぶ彼女。その距離は、もはやお弁当を食べる距離ではない。 だが、その甘い空気は、扉を強く開ける音で一気に霧散した。
「……会長。その、責任の取り方……私も詳しく伺いたいのですが?」
そこには、スマホの録画ボタンを押し、冷徹な笑みを浮かべた二階堂と、なぜかドヤ顔でカメラ目線の星野が立っていた。
「死罪よ! 全員死罪なんだから!!」
夕暮れの生徒会室に、会長の絶叫が響き渡った。
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