第5話:仁義なきランチタイム、開宴
別の日ー 昼休み
「……あ。佐藤くん、見ーっけ」
お昼休みの喧騒を切り裂く、甘く鋭い声。現れたのは学園のアイドル、星野みなみだ。彼女が俺の腕に抱きつき、柔らかな感触が伝わった瞬間、食堂の温度がマイナス40度まで急降下した。
「ちょっと、星野さん。佐藤くんは今、生徒会の『重要取調対象』よ。……その不潔な手を離しなさい」
氷室会長が、いつもの「処刑人」モードを遥かに超えた殺気を放って立ちはだかる。だが、その瞳は怒り以上に、どこか捨てられた仔犬のような不安に揺れていた。
「取調? 冗談。彼は私の『専属シェフ』になるの。ねえ佐藤くん、私の楽屋で二人きり……もっと『ぎゃん』ってさせて?」 「なっ……! 密室で二人きり!? 破廉恥よ、死罪だわ!」
会長が俺のもう片方の腕をぎゅっと、壊れそうなほど強く掴んできた。 「佐藤くん……私をあんなに『きゅん』とさせておいて……他の女の子のところに行くの? 私、もうあなたの味を知る前にには戻れないのよ……っ」
顔を真っ赤に染め、潤んだ瞳で見つめてくる会長。普段の冷徹さは微塵もなく、そこにあるのは、ただ「好きな人の一番」でありたいと願う、一人の不器用な少女の顔だった。
「先輩、落ち着いて! 佐藤さんの照り焼きは、共有財産です!」 「うるさいわ、二階堂! 佐藤くん、選びなさい……。私の『きゅん』か、この泥棒猫の『ぎゃん』か……どっちが大切なの!?」
三者三様のカトラリーが俺のタッパーに突きつけられる。俺を巡る争奪戦は、もはやお弁当の域を超え、剥き出しの独占欲へと変貌していた。 「……会長、近いですって!」 「近くないと、あなたの『特別』になれないじゃない……っ!」
耳元で囁かれた会長の本音。俺の心臓の鼓動は、三人の叫び声よりも大きく、激しく鳴り響いていた。
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