【澪視点・短編: 『海の向こうで、君を見ている』】

海は、

静かだった。


ここには、

痛みも、息苦しさもない。


それでも、

私は覚えている。


朝比奈くんの、

少し困った笑顔。


「大丈夫?」って、

いつも私のほうが聞いてたね。


——本当は、

私のほうが支えられてたのに。


時間は、

不思議。


離れてしまうと、

全部が優しくなる。


苦しかった日も、

怖かった夜も、

ちゃんと、

愛しかった。


私は、

約束をした。


「幸せになってね」って。


でも、

あれは少し、ずるかったかもしれない。


だって、

幸せになるには、

私がいない世界を

生きなきゃいけないんだから。


それでも。


君は泣いて、

迷って、

それでも歩いた。


——偉いね。


結城さんのこと、

ちゃんと見てたよ。


代わりじゃない。

奪わない人。


君が、

前を向くための隣に、

立てる人。


それでいい。


それがいい。


私は、

もう海の向こうだから。


最後にひとつだけ。


ありがとう。


私を、

ちゃんと好きでいてくれて。

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