第11話 最終判定:打ち切り

その日は、

やけに静かだった。


風も吹かない。

BGMも流れない。


背景すら、コストカットされていた。


世界が、

「終わる準備」をしている。


空に、あのモニターが現れる。


《最終判定を開始します》


文字が表示されるたび、

世界の彩度が落ちていく。


《現在の連載順位》

圏外

《処刑ゲージ》

99%


おにぎりマンは、

自分の手を見る。


透けている。

米粒の輪郭が曖昧だ。


「……あれ?」

「俺、こんな軽かったっけ?」


パイラント

「……米、減ってるな」


おにぎりマン

「笑えよ……最後くらい……」


編集部。

編集長は、

判定ボタンの前に立っていた。


赤い。

無駄に赤い。

《打ち切り実行》


指が、震える。

「……これは……作品のためだ……」

自分に言い聞かせる。


その瞬間。

作中世界に、

異変が起きる。


フジキちゃーんが、

無言で前に出た。


ヒールで、

地面を踏み鳴らす。


「……ねえ」

「主人公ってさ」

「順位で決まるもんだっけ?」

目が光る。


だが――

今回は、何も起きない。


《個人の感情は、評価対象外です》


フジキちゃーん

「……は?」


ムリスが、

ポケットの箱を握りしめる。

中身は、

『あたい』の紙一枚。


「……これ、何だったんだよ……」

誰も答えない。


おにぎりマンは、

空を見上げる。


「……なあ」

「俺さ」

「最初、空飛んでたよな?」

「顔、ちぎって

人に食わせてさ」

「……あれ、結構、好きだったんだけどな」

声が、

風に溶ける。


《最終判定》

《打ち切り》

決定音が鳴る。


カン。

その瞬間。


世界から、

ナレーションが消えた。


必殺技名が消える。

設定が消える。


伏線が、

何も回収されないまま消える。


おにぎりマンの輪郭が、

完全に薄くなる。


「……あ」

「俺……消えるんだ……」

最後に。


おにぎりマンは、

笑った。

「……まあ」

「読まれなかっただけで、存在してなかったわけじゃないよな」

誰に言うでもなく。


編集部。

編集長は、

ボタンから手を離す。


モニターに表示される文字。

《連載終了》

誰も、拍手しない。


作中世界。

何もない、

白。

キャラもいない。


背景もない。

ただ、

一行だけ残る。


この物語は、

人気が足りなかったため、

終了しました。


……はずだった。


白い空間に、

小さな黒点が現れる。


誰かの声。

「……まだだろ」

24世紀の猫型ロボが、

立っていた。


「“打ち切り”は終わりじゃない」

「ただの――状態異常だ」

画面が、

ノイズで歪む。


《ERROR》

《ERROR》

《作者、未練あり》


猫型ロボは、

ポケットに手を突っ込む。


「帰るぞ」

「続編という名の地獄へ」


第一部完


――To Be Continued

(※続くとは言ってない)

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