第5話 青と、届かないピザ
溶岩マンが完全に沈黙した森に、
フジキちゃーんは一人立っていた。
溶岩は冷え、
過去は焼き切れ、
依頼は後悔だけを残して終わった。
フジキちゃーんは、
ゆっくりと顔を上げる。
その視線の先――
遥か彼方、
雲を突き抜ける位置にある
ガンメン・スクナッの魔王城。
彼女は、
右手を上げ、
指をピストルの形にした。
狙いは正確。
迷いはない。
そして、
小さく呟く。
「――青」
次の瞬間。
指先から、
かめ〇め波みたいなビームが放たれた。
説明?
いらない。
空気を裂き、
距離の概念を無視し、
ビームは一直線に魔王城へ到達する。
魔王城。
ガンメン・スクナッは、
玉座――ではなく、
ただのイスに座っていた。
小顔の魔王は、
その異変を感じ取り、
目を見開く。
「……は?」
ドォン。
光。
爆音。
次の瞬間、
魔王城は――
消し飛んだ。
壁も、
塔も、
邪悪な装飾も、
設定も。
すべてが消滅。
――だが。
残っていたものがあった。
ガンメン・スクナッが座っていたイス。
そして、
そのイスが置かれていた床、四角一枚分。
世界に取り残された、
あまりにもシュールなワンシーン。
遥か彼方。
フジキちゃーんは、
それを見て、
ニヤリと笑う。
「……12月25日に会おう」
声は届かない。
だが、意味は届く。
ガンメン・スクナッは、
焼け野原の中、
イスに座ったまま呟いた。
「……地獄のクリスマスデートか」
そして、
口角を上げる。
「……おもしれえ」
同時刻。
別の意味で、
世界を壊している男がいた。
トッピングおじさんである。
彼は今、
どこかの薄暗い部屋で、
スマホを高速で操作していた。
「よし……魔王城っと……配達先、ここな」
スクナッの名前を名乗り、
片っ端から注文する。
ピザ。
寿司。
ハンバーガー。
パーティーセット。
ファミリー盛り。
「全部、
現金払いで」
悪意しかない。
注文数は、
もはや嫌がらせの域を超えていた。
「いや~
魔王も大変だねえ」
満足そうに笑い、
トッピングおじさんは
スマホを置いた。
後日。
魔王城が消し飛んだまま、
イスと床だけが残る場所に。
ウーバー〇ーツの配達員たちが集結していた。
「……ここ……で合ってます?」
「住所、確かに……魔王城……」
「……城、ないけど……」
大量のピザ。
寿司桶。
保冷バッグ。
ガンメン・スクナッは、
昨日と同じ姿勢で、
イスに座ったまま固まっていた。
「……ちょっと待て」
汗が流れる。
「……こんな量……頼んだ覚え……」
配達員の一人が、
端末を見せる。
「スクナッ様名義で、全部注文入ってますね」
「……」
小顔の魔王は、
初めて感じた。
――恐怖。
しかも、
今日は12月25日じゃない。
なのに、
もう始まっている。
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