お天気バス

@ramia294

 応援しているよ

 僕たちの家から、そのバス停までは、ゆっくりと歩いても3分もかからない。

 あの頃の僕なら、走って1分。


 妹の愛美の通う小学校は、3つ目のバス停。

 だけど、みんなが知っているけど誰にも秘密の裏道がある。

 田之倉さんの田んぼのすぐ上にある、ため池沿いの小道を走って帰る方が早い。


 最近、元気の無い愛美は、泣きそうな顔をして、バスで帰っている。


 学校で何かあったのだろうか?


 もうすぐ、小学校では運動会。

 身体が弱く、病気がちな僕と違い、愛美は身体を動かす事が好きで運動が得意。

 毎年楽しみにしている運動会。


 去年は、入院中だった僕の病室に駆け込んで、愛美がアンカーだったクラス対抗リレーで優勝したと報告してきた。

 嬉しそうに、バタバタと病院の廊下を走ってきたから、看護師の優子さんに叱られたっけ。


 最近、愛美の元気が無いのは、運動会当日のお天気が心配なのかな?

 最近、晴れた日が続かないものね。


 心配だよね~!


 僕たちの家から、そのバス停までは、ゆっくりと歩いても3分もかからない。


 そのバス停に、お天気バスが一日に一度だけ、やって来る。

 お天気バスに乗ると、お天気の神さまがいる雲の上の世界へ行く事が出来るらしい。


 明日、僕が愛美のために、お天気バスに乗って神さまにお願いしに行くよ。


『運動会の日は、ピカピカの晴れた日にしてください』 ってね。


 大丈夫。

 身体が弱い僕だけど、バスに乗るだけだから。


 病院で、僕を担当してくれているお医者さんの池田せんせい。

 いつもニコニコ優しくて、時々ちょっと厳しい池田せんせいが、言っていたんだ。


『何かやりたい事がありますか』って。


 僕は、運動会が近付いているから、お天気バスに乗りたいって言いそうになって、慌てたよ。


 そんな事を言ったら、病室から出られなくなるものね。


『お家に帰りたいです』


 僕は言ったんだ。

 愛美の運動会が近付いているから、慌てちゃったのか、声がかすれて、息が切れたけどね。


 いつも、冗談ばっかり言っているとうさんは、黙って頷いていたね。

 かあさんは、俯いてばかりいるし。


 もしかして、愛美がまたイタズラばかりしてとうさんたちを困らせているのかもって、心配になったよ。


 愛美は、僕に抱きついて離れなかったけど、お兄ちゃんちょっと苦しかった。

 今度から、力いっぱいギュッとするのは、やめてくれない。

 本当は、ちょっと嬉しいけどね。


 そして……。

 僕は、お天気バスに乗って、雲の上の神さまに会いに行った。


 とうさんもかあさんも愛美も僕を見送ってくれた。

 何故、みんな泣いていたのかな?

 僕が、心配だった?

 バスに乗るだけだよ。


『大丈夫。運動会の日はきっとピカピカの晴れだよ』


 雲の上からは、しばらく、帰れないみたいだけど、空の上から愛美の走っている姿を応援しているよ。



 愛美のこれから全てを

     僕は、応援しているよ。



           終わり


 

 


 

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