第九話 ギャン中はチートに目覚めて調子に乗る

 :おい、ピンゾロも怪しいって言ったやつ出てこい

 :またピンゾロ

 :ピンゾロって一が三つのこと?

 :お前が今持ってる板でピンゾロって入れてみなよ。三回連続で出る確率もついでに調べておいで


 あれからずっと。初回から三回連続でピンゾロである。


 コメント欄はざわつきまくっていて、イカサマを疑うコメントもあった。ダンジョン攻略にイカサマってなんだ、とカケルが笑ったら黙った。


 さっとサイコロを回収して、立ち上がったカケルは明らかに調子に乗っていた。歩く足は地につかず、コメントに返事をする声も普段よりも少し大きかった。


「さぁ次の部屋にはゴブリンが二匹ですね。一応、二十六階層の敵がどれくらい強いのか、見ておかないといけません」


 :やっと戦うのか

 :気づかない相手を闇討ちするんですね

 :え?本当にサイコロ振るスキルなの?


 進化した確率操作『博徒の賽』の超常的な現象は即座に切り抜かれて広まったようで、見にきてくれている視聴者の数は、一気に一桁増えた。遂に十万人に到達したのだ。自然と笑顔が多くなった。


「沢山の方に見ていただいて嬉しいです。じゃあ二十六階層のモンスターがどれくらい強いのか見てみましょう」


 標的はこの先の部屋にいるゴブリンですねぇ、とカケルは付け足して、無造作に部屋に向かって歩いていく。ボスの剣は鞘にしまったままだ。


 :え?ほんとに無防備

 :戦うんじゃねぇのか

 :次は何してくれるんだw

 :ギャン中〜!剣!剣!


 カケルがゴブリン達の部屋に入ると、部屋に居る二体のホブゴブリンエリートがグォォォと吼えた。二十六階層ともなると敵もかなり強くなっている。二体しかいないゴブリンの癖に、咆哮でジャージをビリビリと震わせる。


 これがドラゴンだったら、もっと怖いのかなぁ、なんて呑気に考えながら部屋の奥に転移魔法陣を見つけた。


 転移魔法陣を見つけて、さらに下の階に降りて行く事を考えたカケル。


「もうサイコロ振り損なったら終わりだな」


 なんて配信に乗らないように気を付けながら呟いて、目の前のゴブリン達に目を移した。


 ゴブリン達はカケルをまっすぐに見ながら吼え終わると、くるりと向きを変えて、隣にいるお互いに向かって襲い掛かり、同士うちを初めた。


 ゴブリンAの顔面を、ゴブリンBが凄まじい速さのフックでしばきあげる。その音がドスンという鈍い音で響く。それを物ともせず、ゴブリンAがゴブリンBに組みかかる。


 二匹は地面に倒れ込み、揉みくちゃになりながら、お互いに攻撃をし続けている。人間の見分けだって怪しいと自負しているカケルは、すぐにどちらがAでどちらがBなのかわからなくなった。


「えっ。つよ。これじゃもうこの先戦えないんですけど」


 それを見ながらカケルがつい本音を漏らす。


 :おいw

 :本当に見るだけかw

 :サイコロ振る意味あるの?

 :まじで頼むから説明してくれ!


 怒涛のように流れてくるコメントを意識的に無視しながら、カケルは剣を抜き、片方が馬乗りになり打撃し続けている状態になったゴブリン達に近づいていった。


 下になっているゴブリンが光の粒子となって消えた頃に、上に乗っていたゴブリンの背後に立ったカケル。パイプから持ち替えた剣をその首に向かって振り下ろせば、多少押し返される感触はありながらも、一撃で倒す事が出来た。光の粒子となって消えていくゴブリン。


 その場には二つの魔石が残った。


「一個階層降りただけですよ?強すぎませんか?こんなものですか?有識者の人〜」


 :答えてやる、君のスキルの情報と引き換えに

 :この辺りからモンスターはどんどん厄介になるらしいよ

 :まぁそんなもの

 :ゴブリン強すぎて怖かった


 カケルはこれから先の事を考えて少し寒気がしたが、周囲を見て気を取り直した。


 石造りの部屋と通路が続いているこの中野中型ダンジョン。ダンジョンクラウドで映像が残っているのは三十三階層までだが、そこまではこの石造りと通路が続いているのだ。終わりまで続くのが妥当であろう。


 カケルはそんな見通しで映像が残っていない、つまり公式に踏破と認められていない未踏破ダンジョンを選んだのだった。


 通路の先に部屋とモンスター、その構造が続くダンジョンで、確率操作と勝負師の勘のコンボに、さらに儀式付きだが大規模確率『確定』操作を手に入れた自分がやられる未来を、カケルは想像出来ないでいた。


 そうしてボスまで辿り着いてしまえば、どんな相手でもタイマンでは負ける気がしていないのがカケルという人間であり、それを支えているのは確率操作や勝負師の勘といったスキルだった。


「怖いんですけど、下に降りていきます。探索を進めましょう」


 カケルは力強く宣言した。


 :当たり前だ

 :この状況で戻ったら怒るぞ

 :戦いにすらならないのに何にビビってるの?

 :今帰れると思ってるのか




 その後、ずっとピンゾロを出し続けたカケルは、博徒の賽で手を変え品を変え自分の安全を確保したり、奇妙な光景を作り出しながらダンジョンを突き進んでいった。視聴者が飽きない為のサービスだったが、カケルのスキルの習熟にはとてもいい時間だった。


 そして現在は三十階層のボス部屋の扉の前まで到達していた。中野中型ダンジョンの公式の最高到達地点まで、後三層だ。


「さぁボスです」


 :珍しくやる気

 :死ぬ所が想像出来ない配信者ナンバーワン

 :剣は抜いたけど使わないに百ペリカ

 :次は何を起こすの?


 何体かのモンスターを倒して来て、少しづつ手に馴染んできた剣を抜き放ちながら、十五万人の視聴者相手にカケルが宣言すると、津波のようにコメントが流れていく。


 あの後、配信で切り抜きについて言及した所、積極的に切り抜きが出来て、新しくカケルが起こした現象も早速切り抜かれた。


 それを見た人が、配信に来てくれて、という形でどんどんと増えていき、遂には十五万人にまでなった。みんなで力を合わせれば都市機構も運営できそうな人数だ。


 一番視聴者が増えたのは、ダンジョンでの落石で五ゴブリンが巻き添えになった悲しい事故の時だろう。そんな光景をバックにドローンに向かってアップでピースサインを送るカケルが偉大な魔法使いとして紹介されて、海外でも翻訳されて話題になっていたらしい。


 急に増えた海外ニキのコメントに驚いていたら、視聴者がそれを教えてくれた。


「三十階層のボスはゴブリンキング。早くてでっかい武装したゴブリンですよね」


 :公式のゴブリンキング戦、迫力すごいよな

 :一級二人二級二人以上の四人以上が要求戦力

 :一級も二級もピン切りな以上、それ当てにならないけどな


「じゃあ、行きます」


 カケルがボス部屋の前で座り込んでサイコロを取り出した


 :行きます→サイコロを持ってしゃがみ込む

 :OMG.HOLY SHIT.

 :あなたはどこに行ってるんですか


 

***


連日登場する徘徊です。

次話では進化したカケルのチートがボスへ牙を剥きます。

理不尽な確率操作でボスをハメ殺す様子をぜひご覧下さい。


つまり。


フォローするなら今ですよ!


皆さんが続きが読みたい!と言う気持ちを表現して頂くと、徘徊という妄想袋が膨らんでいきます。


あなたの三タップから五タップという代償のない行動リソースが、私のリソースです。


ぜひ応援して下さい。

よろしくお願いします。


 


 




 

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