第八話 ギャン中はスキップで戦闘をスキップする

【どこから見たって】ギャン中のスキルを考察するスレPart3【スキルです】


 1:名無しの冒険者


 ギャン中がどんなスキルなのか考察するスレ


 ギャン中のスキルによって起きた事

 矢が逸れる、モンスターが転ぶ、同士討ちが起きる、モンスターのスキルが失敗する、見てない攻撃を避ける、宝箱からうさぎのフンが出てくる(推定)。


 2:名無しの冒険者


 頼む。俺がおかしくなっちまったんだと言ってくれ。俺の知ってるスキルの常識とかけ離れすぎてる。


 3:名無しの冒険者

 ※一般的にスキルとは※

 人類が魔素にアプローチする技術

 経験が一定値を超えると習得。頭に使い方が浮かぶ


 4:名無しの冒険者

 3

 俺らってその程度しかわかってない物使ってたんだな


 5:名無しの冒険者


 ギャン中のスキル見てきたけど、これの何がすごいの?地味だし。

 こんなに続くならきっとスキルなんだろうけど

 幸運のスキルで片付けられそうじゃない? 


 6:名無しの冒険者

 5

 冷静になって考えてみてくれ

 君は幸運なんて言う、目に見えて働くパッシブスキルの存在を、現実で見たことがあるかい?

 大発見やろがい


 7:名無しの冒険者

 

 パッシブは気付かないだけで結構いるのは事実って


 8:名無しの冒険者

 5

 何もわかってない奴は帰って


 9:名無しの冒険者

 7

 気付かれない程度の効果とディスるのはやめるんだ


 10:名無しの冒険者

 8

 何がすごいか説明してみろってんだよ


 11:名無しの冒険者

 10

 二十階層以降に潜るような奴らは、身体能力強化に重装備、切り札みたいな強力なスキルを一つ二つ持った奴らが、複数人で潜る。

 ユウキとかソロだしわかりやすいんじゃないか。

 身体強化に伝説級の剣と盾、切り札の光魔法。

 ギャン中は身体強化にジャージと鉄パイプ、あとは謎のスキルだけで戦っている


 12:名無しの冒険者


 実際凄いのか凄くないのかよくわからんよな。ギリギリの所で敵が転んでも


 13:名無しの冒険者

 10

 あとはそのスキルなんやねん、って話

 スキルって大きく三つに分けるんだけど

 魔法系 詠唱が必要、現象を起こす

 強化系 詠唱は必要ない、自身や装備、または味方の能力を上げる

 情報系 詠唱は必要ない、魔素の情報を読み取ったり、魔素を操作する


 さあギャン中の能力は?


 14:名無しの冒険者

 13

 確かに。魔法系に詠唱が必要なのは確定なんでしょ?


 15:名無しの冒険者

 おい、なんかサイコロ振りだしたぞ


 16:名無しの冒険者


 ピンゾロ


 17:名無しの冒険者


 待て待て


 18:名無しの冒険者


 スキルな事、隠す気ねぇだろw


 19:名無しの冒険者


 ふざけんんあ


 ***


「さぁ、休憩も出来ました。ちょっと鉄パイプじゃ厳しいかなと思ったんで、剣にしたんですが」


 カケルは自分の事を冷静だと思っていた。


 カケルは一般的に魔法スキルと呼ばれるものは持っていない。そのためインターネットで聞き齧った話でしかないが、魔法スキルが熟練していくと、新しい魔法の名称や効果、使う為の詠唱が頭に浮かんでくるという。自分に起きた事はそれだと思おうとした。


 :当然だわ

 :鉄パイプでここまできてるのがおかしい

 :生きる確率が高いのを選んでもらって

 :ていうかギャン中がおかしい


「最近は使ってた剣が質に流れちゃったんで、鉄パイプ使ってましたが、それまでは剣を使っていたんですよ。じゃ、探索を再開します。この魔法陣を踏めば二十六階層です」


 :言ってる事おかしいやろ

 :質に流れちゃった?誰が流したんですかねぇ


 さっきまではあんなに怖かった先へ進む、という行為だったはずなのに、今はワクワクしている。そんな自分に気付いてなお、カケルは自分は冷静だと思い込んでいた。



 転移用の魔法陣に乗り、二十六階層に降りてきたカケルが、周囲を見渡すと通路の先に部屋を見つけた。ギィギイとゴブリンらしき醜悪な鳴き声が複数、聞こえる。


 部屋の全景は見えないが、鳴き声や二十五階層までの事を考えると、五、六匹は居てもおかしくない。カケルは思わず涎が出てしまうかと思った。


 スキルを試す良い機会だ。


 :鳴き声する!

 :おい

 :何やってだ


 カケルがその場でしゃがみ込む。そしてポケットから三つのサイコロを取り出すと、そのまま地面に投げた。地面で止まったサイコロを一瞥して、それぞれ三つの一の場所を確認すると、慣れた手つきでサイコロを回収する。鮮やかな手つきで回収されたサイコロは、いつの間にか全て一が真下を向いて、カケルの指先に収まっていた。


 :とち狂ったか

 :ジャージでそこにいる事が狂ってる定期


 カケルはスキルが進化した時、このサイコロを振る、という行為がこのスキルにとってどんな意味を持つのか、正確に把握していた。


 詠唱だ。


 確率操作の進化スキル『博徒の賽』は詠唱の代用として賽を振る儀式を要求してくる。出目の強さで、効果や範囲が変わってくるのだ。


 普通ならこれほど使いにくいスキルはないだろう。何せ、一番確率の高い、いわゆるスカを引いた時に選べる可能性は五十対五十トントンだ。トントンなんて命の危機には絶対に使えない。


 しかし――二から六のゾロ目――やピンゾロ――カケルの愛する一の三連星――なら、勝負師の勘と併用しなくたって、カケルの望む未来が来る確率が百対零なんて事だって出来る。


 賭博で生きる人間みたいでカッコいいから、という理由だけで、最低でも毎日朝と寝る前の二回、サイコロを十三年間振ってきた。そしてあらゆる目を出し尽くしてきた。そんなカケルに賽を振れ、だなんて要求してくるのである。カケルはニヤつきが止まらなかった。


 対象を部屋のゴブリン達に設定して、博徒の賽を待機状態にした。あとは儀式を終えれば発動するはずである。


 :めっちゃ笑顔

 :ダンジョンでサイコロで遊ぶ衝撃映像

 :なんか嫌な予感する

 :ギャン中特有の儀式?


 カケルがサイコロを地面に投げ落とす。カケルの指先は、今日もいつもの繊細な力加減を再現して、ピンゾロを出してみせた。


 その瞬間、キィンと言う耳鳴りと共に、世界の音が消えた。カケルはそれに動じることなく、徐に立ち上がると、散歩するかのような気軽さで、ゴブリン達の巣窟と化した部屋に歩みを進めていく。


 :何を企んでるんだ

 :気づかれてない内に奇襲が基本だろ

 :ギャン中は死ぬ事にした


 好き放題に騒ぐコメント欄を横目に、カケルはぴょんと飛び跳ねるように、ゴブリン達が待つ部屋に脚を踏み入れた。


 :おいおいおいおい

 :そんな余裕なかったはず

 :ふぁーwこりゃ死んだわw


 ゴブリン達はじっと部屋の入り口を見つめたまま動かない。まるでカケルなど存在していないかのようだ。カケルは動かないゴブリン達の横をスキップで通過して、ゴブリンがひしめく部屋の戦闘を文字通りスキップした。


「よしっ」


 カケルは部屋を通り抜けると、まだ向こう側を向いているゴブリン達をチラリと見てから、右手で軽くガッツポーズをした。世界に音が戻ってくる。


 :いや、よしっじゃねぇわ

 :ふざけんなマジで

 :よしっ(笑顔で)

 :どんなスキルだよ


 盛り上がるコメント欄にカケルはニッコリと微笑む。


「ラッキーでしたね。直前に運試しでサイコロ振ったらピンゾロだったので、いけるかなぁと思ったら、いけました」


 :そんなラッキーはないのよw

 :視聴者舐めんなよw

 :命を賭けてる件詳しく解説して

 :こうなってくるとピンゾロも怪しいぞ

 :運が良い(絶対に視界に入ってるのに、ゴブリンに気付かれない)

 :スキップで戦闘をスキップw

 :いけるかなぁ、じゃねぇ。分かれよ、いけねぇだろ。


  

 

 ***


あとがき


徘徊。(自分の胸を親指で指差しながら)


ここまで読んで頂きありがとうございました。

まだ十四話までしか書けていないので、明日からは一日一話更新にします。

書き溜めがなくなる前に早めに週二ないしは週一に移行します。


徘徊とは、貴方のハートとか星とか、続きを読みたいと言う気持ち(表現された物に限ります)をリソースにして、妄想を吐く徘徊する袋です。

貴方の三から五タップというわずかな行動リソースが、カクヨムを通すと、僕にとって大きなリソースとして生まれ変わります。

応援よろしくお願いします。

 

  

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