消えたお弁当と恋の謎

放課後の教室で、俺こと春木恒一は、絶望の淵に立っていた。

机の上に置いていたはずのお弁当箱が、忽然と姿を消していたのだ。


「お、お弁当が……ない……?」


母ちゃんが早起きして作ってくれた特製オムライス入りの弁当。俺の人生において、朝のテンションと昼の幸せはこの弁当にかかっていたと言っても過言ではない。

それが、消えた。


「恒一くん、どうしたの?」

神崎ひよりが、やけに楽しそうに近づいてくる。


「お、お弁当が消えたんだ!」

「なにそれ!面白そう!」

ひよりの目がキラキラと輝く。どうやら彼女には“トラブルは遊びのチャンス”というポリシーがあるらしい。


「ちょ、面白いとか言ってる場合じゃ……」

俺が焦るのも無理はない。


ひよりは机の上を覗き込むと、満面の笑みで言った。

「よーし、私が探してあげる!恒一くんの恋とお弁当は私に任せなさい!」


まずは教室内の探索からスタート。

机の下、ロッカーの奥、黒板の裏……ありとあらゆる隙間をひよりはチェックしていく。


「もしかして、幽霊に盗まれたとか?」

俺が半泣きでつぶやくと、ひよりは首をかしげて、片手で顎を支える。

「うーん……幽霊もありだけど、もっと現実的なのは……」


その時、教室の隅からかすかに「にゃー」という声が聞こえた。

俺とひよりは顔を見合わせる。


「……あれは……猫?」

「捕まえるのは恒一くんの役目!」

ひよりは腕まくりして、俺に指示を出す。


俺は机の下に手を突っ込んで、もぞもぞと小さな猫を探した。

すると、床に転がっていた俺のお弁当箱に猫がじゃれていた。

「こ、これ……!」

俺が手を伸ばすと、猫は弁当箱を抱えたままピョンと跳ねる。


「追え!恒一くん!」

ひよりは全力で応援してくる。

俺はよろよろと猫を追いかけ、廊下まで転げまわった。


廊下の隅っこで、猫は弁当箱を置き、目を輝かせて俺を見上げる。

「……ふう、これで一件落着……」

俺は息を切らしながら弁当箱を救出。


しかし、ひよりの行動は止まらない。

「恒一くん、これで終わりだと思ったら大間違い!次は私が“お弁当ドロボウの犯人”役をやって、あなたに追わせる実験をするんだから!」

「いや、もう勘弁してくれ!」


俺は手で顔を覆うが、ひよりは満足そうに笑っている。

「でも、こうやって一緒に騒ぐと、なんだか楽しいでしょ?」

「う……いや、楽しいっていうか……」

つぶやきながらも、俺の心は少し温かくなった。


ひよりは勝ち誇ったように弁当を見つめ、にっこり笑う。

「恒一くん、今日の放課後、無事にお弁当も救出できたし、これで私たちの友情、いや……恋の絆も深まったね!」


「ちょっと待て、“恋の絆”って……まだそんな大げさな話じゃ……」

俺は慌てて否定するが、ひよりはおかまいなし。


「恒一くん、私といると毎日が冒険でしょ? ほら、猫を追いかけるだけでも心臓ドキドキするでしょ?」

「……ドキドキするけど、それは弁当がかかってるからだろ」

と突っ込むと、ひよりは笑いをこらえながら肩をすくめた。


「いいの!ドキドキも笑いも、全部ひっくるめて恋っていうの!」

「……いや、理屈がおかしい」


俺は弁当箱を抱えて席に戻ると、ひよりは隣に座り、二人でお弁当を開いた。

「いただきます!」

「……いただきます」


今日も、ひよりの奇想天外な行動に振り回されつつ、でもなんだか楽しい放課後が終わったのだった。

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2026年1月15日 12:00
2026年1月17日 08:00
2026年1月20日 07:00

ギャグラブコメ集ーショーもないけど、読んでください!お願いします! @tantan284

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