第3話 綺麗なお姉さん
——こ、これが温泉……?
B温泉に到着した俺はそのあまりのボロボロさに驚きを隠せなかった。まさしく秘湯と言った佇まいである。一応脱衣所があるが、木造のそれは木は黒ばみ、苔が付着し、歴史を感じざるを得ない趣深いものであった。
——とりあえず脱いで入るか
俺は脱衣所で適当に衣服を脱ぎ、早速温泉の中へと入っていった。思いつきで来たため、タオルは持っておらず、代用としてハンドタオルを持ち込んだ。まぁ、これで十分だろう。
ほわぁあ
——へぇ、中々に良い感じじゃないか
どうやら先客はいないようだ。温泉は俺1人の貸切状態だった。温泉から湯気がたちのぼり、空へと消えていった。脱衣所は廃墟のようだったが、温泉はわりかし綺麗で手入れがされていることが伝わってくる。俺はその辺に捨てられていた風呂桶を手にして、掛け湯をした。そして、遂に温泉へと浸かったのだ。
「……ぐっ。ぁぁぁあ」
思わず声が出る。気持ちいい。温泉に入るのなんていつぶりだろうか。子どもの頃に家族で旅行して以来かもしれない。温泉とはこんなに気持ちが良いものだったのか。もっと積極的に入っておけばよかった。世の人も風呂キャン等と言っている場合ではない。積極的に風呂に入っていくべきだ。
「ふぅぁぁ……」
俺は情けない声を出しながら、お湯に浸かっていた。温泉の気持ちよさに脳が支配されつつあったが、俺は大事な目的を見失ってはいなかった。失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した……になるわけにはいかない。俺の目的はババアの乳を見ること。決して温泉で気持ちよくなることじゃないのだ。
◆◆◆
ガラガラガラガラ
——誰か入ってきた……?!
「失礼しますね……」
ちゃぽん
俺は落胆した。温泉に入ってきたのは若い女性だった。声でわかる。これはババアではない。ババアはこんなに色っぽいセクシーな声を出さない。視線を横にやって一応確認するが、やはり若くて綺麗な女性だった。自分より少し年上だろうか、タオルを巻いてお湯に浸かっていた。はぁ。俺が求めていたのは綺麗な女性じゃない、ババアなのだ。彼女は俺に話しかけてくる。
「お兄さん、どこから来られたんですか?」
「俺はB町から来ました」
「へぇ、ここは初めて?」
「初めてですね」
「ここが混浴って知って来てるんだ、エッチだね。お兄さん」
「エッチではありません」
「ふふ。どう? この後暇だったら、私と遊ばない?」
彼女は俺に近づいてきて、肩に手を触れる。俺は怒鳴ってしまいそうなくらいに苛立っていた。俺に触れるなんて、60年早い。俺はババアを求めているんだ。若くて綺麗でセクシーな女性など求めていないのだ。
「すいません。待ち人がいるので、この後は暇じゃないです」
「……。ふーん、あそ。つまんないの」
ガラガラガラガラ
——あれがババアだったらな……
もし彼女がババアだったなら、俺は喜んで着いて行っていただろう。彼女も惜しいことをした。後60年生まれるのが早かったなら、今のナンパは成功していただろう。
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