第4話 上野で凹む太陽神

 夕方の入り口の午後四時。

 平日な上にあまり人通りも多くない時間帯ではあるものの、流石は東京有数の観光地。


 上野公園は今日も至る所で人があふれている。


 公園近くのパーキングに官用車というにはちょっと頼りない小型普通車を停め、私はカトリさんとカシマさんを連れだって上野公園の中に入った。


 たくさんの観光客が行きかうさくら通りから上野駅側の小道に入り、時わすれじの塔の辺りに入ったところで、私たちはを発見した。


 一人の男性が、項垂れた様子で立ち尽くしている。


 身につけているのは古代ギリシャの男性が身に着けていたエクソミスという衣装だ。輝くような金髪と堀の深い顔立ちをした美青年だが、その表情は今日の天気模様のようにすぐれない。


 先ほどから彼の周囲を数人の人が行き交っているが、現代日本では特異な服装をしているはずの彼に目を止めるものはいない。


 間違いない。今回の案件の対象だ。


 とりあえず、人目が無いことを確認し、私は暗鬱な表情で立ちすくむ男性に声をかけた。


「かくもかしこき大神に、畏み、畏み、申し上げる。私はこの国の政府の役人、思井かのと申します。尊き汝の御名をお告げすることをお許しください」


 ヘリオス大神。


 名前を呼ばれたヘリオスなる男が、ゆっくりとこちらの顔を向けた。


 ヘリオス。ギリシャ神話の太陽神。


 本来、天地を照らすはずの太陽神が、何故曇天を起こしているのか。


 話を聞かせてほしいので場所を移したいというこちらの依頼に重々しく頷くと、私たちに続いてヘリオスがとぼとぼと付いてくる。


 公園内だと何かと目立つ。

 確か、不忍池にベンチがあったはずだ。

 しきりにヘリオスに話しかけるカシマさんと黙ったままのカトリさん、そしてヘリオスを連れて、私たちは不忍池へと向かった。

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