第3話 カシマさんとカトリさん

「おっはようございまーす!島マース!今日沖縄海開き!あたしの朝ごはん鯵の開き!」


 意味不明な言葉の羅列を大音響で叫びなら、一人の少女が、ずっかずっかと足音も高らかに入ってきた。


 雪のように白い肌と日本人離れした美しい顔立ち。


 綺麗に結われた色素の薄い長髪をなびかせながら、白を基調とした制服を身にまとう、絶世の美少女。


 その名は、鳴神なるかみカシマ。


 この職場の委託職員を務める女子高生だ。


 見た目は軽井沢の別荘のテラスで純文学でも読んでいそうな深窓の御令嬢と言って十分に差し支えない容姿なのだが……。


「今日もお空はクモクモモクモク!気分クヨクヨであたしの気分マジ供養!ジメジメサメザメ鮫映画でも観て気分晴らしたいバラしたい!死体バラバラシャークアタック!大西洋を血に染めろメロメロバタン!」


 相変わらず、意味がわからない言葉の羅列をまき散らしながら、カシマさんはまるで冬眠から目覚めたクマが餌を漁るかのような勢いで冷蔵庫に首を突っ込むと、中から鮭ではなくカフェオレを取り出し、グビグビと咽喉を鳴らして飲み始めた。


「ぶはー!いいねえカフェオレ!マジ御礼!あたしの気持ち満員御礼千秋楽!」


 と、言った感じで、とにかく、彼女は騒々しい。


 存在そのものが騒音と言っていい。


 ともかく、出勤早々終わられては困る。


「もう昼過ぎですけど、おはようございます、カシマさん。来たところで申し訳ないんですが、実は……」


「外勤?今日は何処?」


 ぴぇ。


 という無様な悲鳴を呑み込みながら、オフィスのソファーに腰掛ける声の主の方に、私は振り返った。


 端正な顔立ちと長い黒髪。


 黒をベースにした制服に身を包む、この麗しくも精悍な少女の名は、祝乃いわいのカトリ。

 

 カシマさんと同じく、委託契約職員の女子高生だ。


 カシマさんとは対照的に、彼女は自分から動かない限り全く存在感が無いが、一度認識すれば、決して目を逸らせなくなる不思議な吸引力を持っている。


 さて。


 ようやく、一人と二柱が揃ったか。

 

「カトリさんの言う通り、今日はこれから外回りです。ここ数日の曇天騒ぎは知ってますね?高天原本局は本件を蕃神に絡む異変と断定しました。これより、現地に向かいます。今回のお相手は、この神です」


 神祇部から送られてきたデータをプリントアウトし、私はカシマさんとカトリさんに手渡した。


 紙に目を落とすや否や、双方の顔が変な顔で固まった。


 無理もない。


 この怪事をもたらしている神が、こともあろうに、太陽神だったからだ。

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