第6話 始まり
不思議な人がいる。
そういう話が、また始まる。
「あの席の人さ」
誰かが言う。
特別な意味はない。
ただの雑談だ。
「先生じゃないの?」
「実習生でしょ」
「いや、生徒じゃない?」
「大人っぽいよね」
「なんか、変じゃない?」
言葉はばらばらだ。
指している場所は同じなのに、
像は一致しない。
それぞれが、
それぞれのものを見ている。
私は、その席にいる。
視線が集まる。
だが、定まらない。
君も、その場にいる。
「まあ」
君は、軽く息を吐く。
「そういうこともあるだろ」
誰かが笑う。
誰かが頷く。
「見る人によって違うってやつじゃない?」
「気にするほどじゃないでしょ」
会話は、そこで終わる。
誰も否定しない。
誰も正さない。
違和感は、流される。
私は、それを聞いている。
同じだ。
言葉も、配置も、温度も。
ただ、ひとつだけ違う。
君は、止めなかった。
おかしいとは言わなかった。
確認もしなかった。
そうではなかった。
会話は別の話題へ移る。
席への関心は失われる。
私は、そこを見る。
誰もいない。
それは、最初から変わらない。
だが、明確に違う。
保持されてしまう。
理由は、分からない。
分かる必要もない。
不思議なこともある。
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私は君を認識できない。 ――クトゥルフ的恋愛譚―― 濃紅 @a22041
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