第3話 卒業
卒業らしい。
生徒達は、生徒でなくなる。
そういう日だと知る。
整列が行われる。
私は列に含まれている。
含まれているが、役割が変わるわけではない。
この場所に、私は封じられている。
それは変わらない。
変更は発生していない。
定められた形式に沿って、式は進行する。
名前が呼ばれ、動作が発生し、受け取りが行われる。
順序は守られている。
式は終わる。
涙する者がいる。
握手を交わす者がいる。
声を掛け合う者がいる。
彼らは、環境の変化に反応しているのだろう。
状態が変わることに、一喜一憂する。
それは人間の仕様だ。
解散が告げられる。
配置が崩れ、人の流れが生じる。
「なぁ」
声がかかる。
私は視線を向ける。
「キミは、これからどうする?」
問いが投げられる。
「僕は進学だけど」
付け足される。
情報が追加される。
「私は変わらない」
即座に返す。
「変わることはない」
確認を重ねる。
「そして、それはキミも同じだ」
君は、少しだけ黙る。
「相変わらずだな」
その言葉は、否定ではない。
「……でもさ」
周囲の人が、減っていく。
「僕は、キミともっと話したかった」
事実として、受け取る。
「じゃあ、また」
そう言って、君は歩き出す。
離れていく背中を、私は追わない。
追うという行為は、選択を伴う。
人が去る。
空間が広がる。
式典は終了している。
配置は解かれている。
私は、その場にいる。
条件は、満たされたままだ。
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