第2話 会話
席に着く。
机の位置は変わっていない。
椅子も同じだ。
配布物を机に置き、紙を整える。
周囲では、人の動きが重なっている。
それぞれが、求められている行為を続けている。
「キミさ」
隣から声がかかる。
私は視線を向ける。
君は、少し言葉を選んでいるようだった。
「……変なこと、聞くけど」
前置きが入る。
この形式は、質問の内容が直接的でないことを示している。
「いじめられてないか?」
私は、その語を処理する。
暴力。
排除。
意図的な干渉。
この環境において、該当する事象は確認されていない。
「私は、どう見えている?」
質問を返す。
「え?」
反応が一拍遅れる。
「いや、キミのことを聞いてるんだけど」
「人の視線、気にする方なのかと思って」
前提がずれている。
だが、修正は行わない。
「気にしていないことはない」
私はそう返す。
君は、続きを待っている。
「ただ、あなたはそのままでいい」
沈黙。
君は、少しだけ視線を逸らす。
「……変な奴だな」
小さく、息を吐く。
「原因は、これか?」
問いというより、独り言に近い。
私は、その判断を否定しない。
周囲の音が変わる。
椅子が引かれる音。
立ち上がる気配。
人の配置が変わり始めている。
「もう帰るけど」
君が言う。
「キミは?」
「理由が無い」
即答する。
君は、一瞬だけこちらを見る。
何か言いかけて、やめる。
「……そっか」
それだけ残して、離れる。
人が減る。
声が少なくなる。
光量が落ちる。
状態として、それは把握できる。
だが、
だからといって、
変更される行動はない。
私は椅子に座り、
机に手を置いたまま、
配置を維持する。
この形態は、
まだ破綻していない。
条件は、満たされている。
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