第3話.「違和感」

 ぼんやりと目を開けるといつもと変わらず天井が真っ先に目に入る。そして、カーテンの隙間から差し込む朝日が俺の顔を照らす。


「まぶしっ」


 そのせいで目が覚めてしまう。身体を起こすのが面倒で手探りでスマホを探す。

 寝る直前に枕の左側に確かに置いたのだが見つからず、右側を側にも手を伸ばしてみるがやっぱり見つからない。


「…あれ?どこいった?」


 このままじゃ埒があかないのでしょうがく身体を起こして枕の下を探してみるとスマホはすぐに見つかる。それと同時に雫はベッドに肘を置き顔を伏せて寝息を立てている。 


「すぅーすぅー」


 よく見ると高校の制服の上にエプロンを着ている。朝から台所に立ってくれたんだろう。その証拠にいつもは縛っていない腰まで伸びた長髪を今はヘアゴムで縛ってまとめている。

 

「俺を起こしに来てくれたのか?それで自分が寝ちゃったら意味ないのに」


 雫を起こさないようにゆっくりとベッドから降りて立ち上がる。途中でベッドが軋んだ時は起こしてしまうんじゃないかとドキドキした。


「…あれっ?私、寝ちゃってた…?」


 それから数分経ち俺が軽い身支度が終わる頃に雫は目を覚ます。寝ぼけているのかキョロキョロと周りを見ている。そして俺と目が合う。


「おはよう姉さん」

「あっ、う、うん、おはよ」


 雫は立ち上がるとトタトタと部屋から出て行ってしまう。

 

「寝顔を見られたのが嫌だったのかな」


 それならこんなところで寝なきゃいいのに。それに寝顔なんて今更だ。俺達が何年同じ家で育ったと思っているんだか。



 カバンの準備まで出来たところで1階のリビングに向かう。するとやっぱり朝食を作ってくれている。さらには2人分の弁当も置いてある。


「もしかしなくても作ってくれたの?ごめん、俺だけゆっくり寝ちゃってて」

「ううん、気にしないで。私がやりたかったからだけだから」

「ありがとう。じゃあ、あとは俺やるから姉さんは座ってていいよ。流石に何もしない訳にはいかない」


 そう言って雫が盛り付けた皿を貰うとテーブルまで運び、それ以降の作業を引き継ぐ。

 いつもは雫に遠慮されて手伝えないが、今日はそれがなくて安心する。少し変だなとは思うけど、それでも何もさせてもらえないよりは全然ましだ。


「秀二ありがとう」


 並べ終えて定位置の席に座った雫が言ってくれる。


「大した事じゃないよ。それよりも姉さんだよ。朝から大変だったよね?」

「1日くらいなんともないよ。それよりも毎日してくれてる母さんの方が大変だよ。帰って来たらちゃんとお礼を言わなきゃ」

 

 本人はこう言っているが、実は雫がいつも朝から母さんの手伝いをしている事は知っている。

 知ってるくせに自分は起きて手伝ってないのだから最低だ。

 だからせめて食器洗いくらいは率先してやっているのだけど…それでも内容としては足元にすら及ばない。


「そうだね。でも今日は姉さんにありがとうって言わないと」

「じゃあ素直に受け取るよ。秀二も手伝ってくれてありがとう。それにいつも気にして洗い物してくれてありがとう。その優しいところがずっと好き」  


 どちらかと言うと罪滅ぼしのつもりだったのだけど…。まぁ、どうであれ気付かれていたのは確かだ。だから少し照れくさく思う。

 そんな事を考えているもんだからせっかくの食事がほんの少しだけ冷めてしまった。

 


「途中まででいいから一緒に学校行きたい」


 家を出る直前に雫が俺にお願いをしてくる。こんなお願いをしてくるのは初めてだ。俺もちょうど雫と話したい事があったから断る理由はない。だけど、頼んで来た当人は何故か不安そうな顔をしている。


「人目もあるし駄目だよね」

「いいよ。俺も話したい事があったから」

「それって…」

「ああ、家の事だよ。役割分担しないと昨日みたいに全部姉さんがやっちゃうでしょ?俺だって出来るんだから頼ってよ」

「なんだ、そっちか。いいよ、決めよう。秀ニが望むなら。…どうしたの?ほら行こ」


 俺は何も間違った事を言ってない自信がある。それにあの場面なら家の事を話題にするのは雫なら分かるはずだ。

 なのに雫の最初の反応は違った。


『なんだ、そっちか』


 そう話す顔は安堵と不安が混じった顔をしていた。その顔が妙に頭に残り、俺に表現し難い違和感を感じさせていた。

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クールで美人と有名な姉は俺のカノジョ。 オレレモン @ore_remon

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