本当は良い子

エルフの里から外に出たと言っても、いきなり街道なんかに出るわけでもなく。


里が森の中にあるのですから、出た先も当然森の中なわけです。


異世界的な光景を期待していたコメント欄は、当然ながら意気消沈していますが私には関係ない事で。


そんな事よりも慣れない森の中を歩いて疲れてきました。


いや……先導するエミリアが歩きやすいように道を切り開いてくれているんですけどね。


いかんせん引きこもりにこの森の道はキツ過ぎます。


「ひぃ….…ふぅ……」


「はぁ……全く仕方ないわね」


ひぃひぃ言いながらついてくる僕を見かねたエミリアが近づいてくると、何なら呪文を唱えます。


すると、私の身体が緑の光に覆われ、身体の不調が嘘のように無くなってしまいました。


「え?すごく身体が楽になったんですけど」


「森の力を集めてリリィにぶち込んだから少しはマシになったでしょ。

ほら、元気になったならサッサと行くわよ」


「エミリア……本当に良い子過ぎて、好き」


「バカ言ってるんじゃないわよ!」


僕の言葉にエミリアはサッサと前へ歩いていきますが、エルフの特徴的な耳が先まで真っ赤になっています。


そうして、再びナイフを使いながら道を切り開いて歩きやすいように踏み固めて行ってくれるのを見ると……良い子以外の言葉が思いつきませんよね?


コメント欄も賛同してくれていますが、エミリアが良い子なだけでタワーは立っていないですからやめてください。


コメント欄に茶化されながらも、今度は軽い足取りで後をついていきます。


そこから体感にして30分……いえ、嘘をつきました。


配信魔法で現在時刻や配信時間が分かるので実際に30分です。


「しっ、着いたわよ」


先導していたエミリアが木の影に隠れるので、私も同じように木の影に隠れながら周囲を伺います。


視線の先には私たちよりもやや大きい入り口の洞窟があり、入り口には一匹のオークが腰掛けていました。


「あれって見張りですかね?」


「見張りだろうけど、コイツらはそんなに頭が良くないわ。

だから油断しまくっているわね」


エミリアの言う通りに、オークは辺りを警戒するでもなくボーッと真正面を見ています。


時折欠伸をしているので見張りに全く集中していないですね。


「ちょうど良いわ。

まずはあの一匹を仕留めるから、後はいつもの流れでいきましょう」


そう言ってエミリアは背中の短弓を取り出して構えます。


矢は……と言いかけて気が付きます。


エミリアの手に白く光る矢が握られていた事に。


エミリアがその矢を放つと、オークの喉に吸い込まれるように突き刺さる。


オークはそのまま仰反るように倒れて、ピクリとも動かなくなったのであった。

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