第3話 親友二人のお茶会 前編

 パーティーをなんとか終えてコルディエ侯爵家の屋敷に戻ったカトリーヌは、屋敷の入り口に誰かが待っているのに気づいた。


 急いで馬車を降りると、そこにいたのはコレットである。

コレットはふわふわなピンクの髪を複雑に可愛らしく編み込んでいて、とても綺麗な髪飾りまで光っていた。服装も着飾ったドレス姿で、先ほどのパーティーからそのまま侯爵家の屋敷に来たことが明白だ。


「コレット、どうしたの?」


 首を傾げたカトリーヌに、コレットは頬を膨らませる。


「もうっ、どうしたの? じゃないわよ! さっきのパーティー、私はもう我慢できないわ。とにかく話し合いよ! お茶会よ!」


 怒りを露わにしながら、コレットは有無を言わさずカトリーヌの手を引く。


 しかしカトリーヌもドレス姿だ。一度着替えたいと口を開きかけると、コレットにギンッと睨まれた。


「今はそんなことを言ってる場合じゃないわ! コルディエ侯爵が帰ってくるまでに話し合いを済ませるのよ!」

「お父様にも関係があるの?」

「ええ、私の考えた作戦を実行するならね」


 笑顔で言い切ったコレットは、慣れた様子で屋敷の中を進んでいく。頻繁にここに来ているコレットは、もう侯爵家の使用人たちとも仲良しだ。


 使用人たちにお茶会の準備を頼み、二人は茶会室に入った。


 向かい合って腰掛けたところで、コレットが悔しそうに告げる。


「カトリーヌはこんなに可愛いのに。優秀で優しくて最高の親友なのに」

「あ、ありがとう」


 コレットの素直な賞賛に、カトリーヌは照れて頬を赤くした。


 カトリーヌはストレートな茶髪で一見地味に見えるのだが、顔は美人で笑うと少し子供っぽくなり、手足がスラッと長くてスタイルがいい。さらに金色に近い瞳がとても魅力的だった。


「もうっ、こんなに可愛いのに‼︎」


 照れた顔を見て、コレットは改めて悔しそうに叫ぶ。


「それに気づかないなんて、セドリックもあのケバい女たちも全員馬鹿よ! まあ、あんな馬鹿王子にカトリーヌが執着されなくて良かったかもしれないけど!」


 不敬なことを叫ぶコレットに、カトリーヌは慌てた。


「ちょっとコレット、王族批判なんてダメよ。コレットが罰を受けたりしたら、凄く悲しいし辛いから……」


 眉を下げたカトリーヌに、コレットが自らの額に手を当てる。


「もう、なんでそんなにいい子なのよ……! でもカトリーヌだって思うでしょ? セドリックは王族として適さないって」


 コレットの問いかけに悩みながらも、カトリーヌは小声で返した。


「それは、適しているとは言えないけど……だからこそわたしが上手く立ち回って、国のために動かないと」


 決意のこもった瞳でそう言ったカトリーヌに、コレットは首を横に振る。


「カトリーヌがそこまでする必要はないわ。絶対にない。ずっと思ってたけど、カトリーヌがどんなに上手くやったって、セドリックの尻拭いなんて無理よ。あの王子は馬鹿すぎるわ」


 言い切ったコレットに、カトリーヌは反論できない。


 現状でさえ、カトリーヌはセドリックのやらかしたことに、ほとんど対処できていないのだ。


「だから、あの王子には失脚してもらいましょう。もちろんカトリーヌとの婚約破棄も一緒にね」


 楽しげにウインクをしたコレットに、カトリーヌは訝しげな表情になる。


「そんなことできるの……?」

「ええ、さっきのパーティーの間中、考えてたのよ」


 コレットが自らの考えを口にしようとしたところで、茶会室のドアがノックされた。


「カトリーヌお嬢様、コレット様、お茶をお持ちいたしました」

「ありがとう。入って大丈夫よ」


 カトリーヌが答えるとドアが開き、部屋の中に芳醇な茶の香りが充満する。


「う〜ん、やっぱりこのうちのお茶はいい香りだわ」

「クッキーとマドレーヌをご用意いたしましたが、ケーキなども召し上がられますか?」


 使用人の問いかけに、カトリーヌは首を横に振った。


「わたしは大丈夫。コレットは?」

「食べたいけれど……太るからやめておくわ。ドレスが着られなくなったら困るもの!」


 ドレスや装飾品が大好きなコレットは、自らの体型維持にも熱心だ。


「かしこまりました。ではごゆっくりとお楽しみください」


 使用人が下がると、二人はお茶を口に運ぶ。


 一息ついてから、またコレットが口を開いた。


「それで、作戦を説明するわね」


 そこからコレットが説明した作戦は、とても大胆なものだった。

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