第22話 まだまだ足りないわ

私は光の中に突っ込んだ。

そこには、今にも光に溶けそうな「元将軍」がいた。

「将軍! 逃げるんですか!? あなた、戦場では最後まで戦うって言ったじゃない!」

「……もう、疲れたのだ。忘れてしまえば、この足の痛みも、家族に忘れられた悲しみも、なくなるのだから……」

将軍の目から、一筋の涙がこぼれる。

私は彼のゴツゴツした手を、両手で力いっぱい握りしめた。

「忘れたっていいよ! 私が覚えてる! あなたが昨日、味噌汁のナメコを『戦の糧食』だと言って完食したこと、私が一生語り継いでやるから! だから、まだここにいてよ!」

私の叫びに、将軍が目を見開いた。

光が、一瞬だけ揺らぐ。

「……お前、……うるさい女子(おなご)だな」

将軍がフッと笑った瞬間、光は霧散し、広間にはいつもの加齢臭と湿布の匂いが戻ってきた。

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