第21話 そんなにここは甘くないのよ

しかし、そんな小手先の技が通用しなくなる事態が発生した。

屋敷の広間に、本物の「天国からの光」が差し込んできたのだ。

その光からは、甘い花の香りと、この世の悩みすべてが消えるような、抗いがたい安らぎが漂ってくる。

「ああ……。お母ちゃんが呼んでる……」

住人たちが、ゾンビのようにふらふらと光に向かって歩き出す。

「待って! 行っちゃダメ! 行ったら全部忘れちゃうんだよ!」

私は必死に彼らの服の裾を掴んだ。

だが、老婆の力では止められない。

「岩音さん、どいて。ここはもう、彼らの領域よ」

清潔のリン(神様)が、珍しく険しい顔で私の前に立った。

「天国の誘惑は、介護士の力でも止められない。それを止められるのは、同じ『人間』の言葉だけなの」

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