第12話 ボロボロのプライドは捨てろ

私は震える足で、最上階の扉を開けた。

そこにあったのは、一面の鏡。

しかし、鏡に映っているのは今の私の老婆姿でも、元の28歳の姿でもなかった。

そこには、「母・三千代」の今の姿が映し出されていた。

現実世界の病院で、やつれ果てた顔をして私の手を握る母。

その隣には、椅子に座り、珍しく顔を覆って肩を震わせている父・佐々礼。

『……なるみ、ごめんね。お母さん、あなたに甘えすぎてた』

母の嗚咽が、鏡越しに聞こえてくる。

「お母さん……」

私は鏡に手を伸ばした。

だが、蝶子が冷たく遮る。

「戻りたいなら、そのボロボロになったプライドも、八千代さんへの罪悪感も、全部ここで捨てていきなさい。身軽にならなければ、魂は現世の重力に耐えられないわ」

「捨てるって……どうやって?」

「ここの『掟』をクリアすること。それができなければ、あなたは永遠に、この『ジジジバババーン』の住人として、名前を失うことになるわよ」

私は拳を握りしめた。

老婆の皮を被った、28歳の魂が燃える。

「……やってやろうじゃないの。100万トク、最短記録で貯めてやるわ!」

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