第8話 とりあえずどうしますか?

霧が晴れると、そこには「ジジジバババーン」の住人たちが集まっていた。

皆、どこか遠い目をして、私と掃除魔の奥様を見守っている。

「で、結局どうするのよ。トクは貯まったけど、帰れる気配がないじゃない」

私は蝶子の元へ詰め寄った。

蝶子は優雅にティーカップ(中身は多分、高級な宇治茶)を置き、小首を傾げた。

「とりあえず……そうね、お茶でも飲んだら? 焦っても、あなたの現世の体は今、集中治療室で機械に繋がれているんだから」

「集中治療室!? 私、そんなにヤバいの!?」

「心肺停止からの蘇生だもの。脳にダメージがあるか、それとも魂が戻るのを拒むか……。今、あなたは『どちらの人生も選べる』状態なのよ」

蝶子の言葉に、私は言葉を失った。

戻れば、またあの地獄の介護生活が待っている。

母は疲れ、父は逃げ、私は自分の人生を削り続ける日々。

でも、ここなら……。

「……ここなら、嫌なことは全部忘れて、神様に甘えて暮らせるってこと?」

「そう。ただし、あなたの『名前』も『思い出』も、全部この世界の霧に差し出すことが条件だけどね」

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