第4話 飛ぶ鳥跡を濁さず
「ハァ……」
勉強が手につかない。なんで俺はこんなことで悩んでいるのだろうか。
『さっきは申し訳ない。もしよければ夜電話しないか?』
橘さんへ送ろうとメッセージを書いては消し、書いては消す。
「いっそ、友紀に文章を……いやいやダメだろ」
ベッドでゴロゴロしながら、あぁでもない、こうでもないと悩み続け──。
「あぁーもういい。別にどうなってもいい。むしろどうとでもなれ」
送信ボタンを押した。そしてスマホを放り投げる。
「勉強しよっと」
雑念を払い、あえてそれを忘れるように勉強に集中する。
どのくらい経っただろうか。スマホの通知音が鳴る。チラリと見れば、マイナマッチからの通知だ。
「ふぅー」
一息つき、スマホを開く。
『21時から30分だけなら電話できます』
『それでお願いします』
すぐに返信をした。
「……何やってんだろうなぁ俺」
白状しよう。勉強している間も常にスマホが気になっていた。当然橘さんを好きになったとかそんな甘酸っぱい感情は一切ない。
「この中途半端な状況にストレスを感じているんだろうな」
自己分析の結果はそんな感じだ。変なアクシデントにより、自分の想定していた未来から大きく外れたことによるストレス。だから橘さんの動向が気になる。
「そう、それだけだ」
「修二ぃー、ご飯できたから下りてきてー!」
時計を見る。時刻は18時20分。夜は長そうだ。
「…………ご馳走様」
「はやっ。アイス買ってあるけど食う?」
「いらない」
夕食を終え、自室へ戻る。両親や姉の食事が終わる前に風呂を済ませてしまう。
現在時刻は20時。あとは特に予定もないのでアラームをセットし、適当な動画を見ながら時間が来るのを待つ。
動画を見てる最中も時間を気にしてたため、結局アラームは鳴る前に切った。
時間ちょうどに橘さんへとコールする。
『はい、もしもし』
「もしもし、修二です」
『橘です』
「『……」』
電話は繋がった。名前を言い合って時が止まった。
「……あー、その、改めて昼間は申し訳ない」
『……何に謝ってるの?』
「何に……?」
何に謝ってるか、だって? ……そう言えば、俺は何に謝っているのだろうか。
「えと、不快な思いをさせたことに」
『ん。分かった』
「『……」』
また時が止まる。ダメだ、気まずい。もういっそ電話を切って、寝て、全てを忘れたい。
「その、最後に言った件だけど」
『パートナー候補を続けるかどうか?』
「うん。破棄しよう。俺たちはお互い恋愛をしたくて出会ったんじゃない。似たような条件であればお互い見つかるはずだ。わざわざ不快な相手とい続ける必要はない」
飛ぶ鳥跡を濁さず。姉の言葉じゃないが、こちらから身を引くのがせめてもの誠実さだろうと思った。
『修二くんってすっごく自分勝手だね』
「え……?」
想定外の言葉に心臓が一瞬痛くなる。
「いや、これは、橘さんの気持ちを考えて……」
『私がどう思ってると思ったの?』
「…………」
橘さんがどう思っているか。改めて聞かれると言葉に詰まってしまう。
「……俺のことを好ましくないと思っていると思う」
絞り出したのはそんな言葉だ。
『……全然違うよ。帰ってから、修二くんってどんな人だろう。ちゃんと仲直りできるかな。パートナーとしてこういうことが起こった時に話し合えるかなぁって考えてたのに……』
……ナニヲイッテルンダ?
「……そんなのまる本物の恋愛みたいじゃないか。俺たちは利害が一致してるからこそのパートナーであろうと──」
『違うよ。たとえ恋愛じゃなくても人間関係である以上、真剣に向き合う必要はあると思う。パートナーであり続けるためにお互い努力は必要なんだよ。どれだけ利害関係が一致しててもね』
「俺はそういっためんどくさい人間関係がイヤでパートナーが欲しいのに、それじゃ本末転倒だ!」
『うん。だから言ったよね? 修二くんってすっごく自分勝手だねって』
「……悪い、橘さん。今日はここまででいいか?」
『……分かった。うん、おやすみ修二くん。
通話を切る。頭の中で橘さんの言葉がぐるぐると周り、今夜は眠れそうになかった。
恋愛をしたくないからパートナーになろうとした俺とカノジョが、本気で恋に落ちてしまったらどうなる? 世界るい @sekai_rui
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