宝物

その日、私は部屋の掃除をしていた。


「何これ?」


それは綺麗な石だった。

一見くすんで見えるが、光に当てると青く輝いた。


「これ、磨けば高く売れるんじゃない?」


石というのは磨けば宝石になると聞いたことがある。


この石がなぜここにあるのかはわからないが、とりあえず私の部屋にあったのだから私の好きにさせてもらおう。


期待に胸を躍らせながら石を磨くためのタオルを取りに行くとそこには母がいた。


「何? ニヤニヤして。良いことでもあったの?」


「いや〜……うへへ……実は〜……」


高く売れるかもしれないと思うとどうしても顔がにやけてしまう。


「実は?」


私のにやけ顔に何か怪しいと思ったのか、母がこちらを睨んでくる。


「私の部屋に高く売れそうな宝石がありまして〜……」


「宝石?」


その言葉を聞いた瞬間、母は一瞬何かを考えてこう返してきた。


「宝石って……もしかして、光に当てると青く光る石のこと?」


「え? お母さんあの石のこと何か知ってるの? もしかしてあの石、お母さんの?」


そう言うと母は違う違うと笑った。


「あんた覚えてないの? あの石はあんたが近くの海岸で拾ってきたものでしょ? 綺麗な石だから自分が結婚するときに指輪にしてもらうんだ、ってはしゃいでたじゃない。」


全く覚えていない。いつの話だ。確かに昔は海岸でよく貝殻などを拾ってきていたが……


「え、じゃあ、あの石はただの石ってこと?」


落ち込む私に、そうでもないわよと母は続けた。


「石好きのおじいちゃんに見てもらったら、これは間違いなくサファイアじゃーとか言ってたわよ? 本当にそうかはわからないけれど。」


なんでもかんでも貴重な石だと言う祖父のことだ。ちゃんとした鑑定などはしていないだろう。


部屋に戻った私は寝転がりながら改めて石を眺めた。


それにしても綺麗な石だ。宝石じゃなかったとしても、本当に指輪にしたらみんな本物と見間違えるかもしれない。


「この石は取っておくか。」


なんだか懐かしい気持ちになった私は、石を綺麗に箱に入れて飾った。


それから毎日陽の光を浴びて青く輝くその石は私の宝物だ。

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