第3話


 それから、とんとん拍子に進んだ。

 魔王が住み着いているという城へ向かう途中、魔王の手下たちと戦ったり、道中で出会った弓使いのキュネや、大剣使いのゴルラさんと巡り合った。

 仲間が増えるにつれ、私たちの絆は深まっていった。

 特に同じ女性のキュネとは仲良くなった。彼女の生い立ちや、私とトレムくんたちとの出会いを語ったりした。


「お似合いよね、二人」


 たまたま寄った街でぶらぶらと息抜きをしていた時。

 キュネがふとした拍子に、そう呟いた。

 私は歩みを止めて固まった。「どっちと?」とは咄嗟に言えなかった。 ゴルラさんは既婚者だ。となると、選択肢は二人しかいない。

 キュネは固まった私を見てきょとんとした。「どうしたの?」と言われ、首を横に振った。


「えっと、何がお似合いなの?」

「何って……トレムとアンヘラのことよ」


 キュネが肩を竦めて笑った。ツインテールが動きに合わせて揺れる。


「だって、魔王に連れ攫われたあなたを、トレムが助けたんでしょう? まるで、おとぎ話みたいじゃない。素敵ねぇ」


 その場にはシュトくんもいたのだ。だから、私とシュトくんが「お似合い」で「おとぎ話みたい」でも良いはずだ。

 なのに、やっぱり私に「お似合い」はトレムくんになる。

 なんだかその決められた道筋に、何も言えないままぼんやりとしてしまった。


「そ、そう?」

「うん、二人ってすごく相性がいい。正義感の強いトレムと、淑女なあなた。まるで運命よ」


 キュネが笑った。笑顔が眩しくて、思わず目を瞑りたくなった。

 きっと、シュトくんにお似合いなのはキュネのような女性なのだろう。

 元気で、明るくて。男に頼らずとも生きていけると言いたげな凛々しい姿は、父の加護の元で暮らしてきた甘ちゃんな私とは大違いだ。

 こういう二人が結ばれる物語の方が、好まれるに決まっている。

 そう、相場が決まっているのだ。


「キュネは」

「え?」

「シュトくんのこと、好き?」


 問われたキュネは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。私は続けた。


「だって二人も、お似合いじゃない」

「えぇ? そうかな? 私、ガサツだし……」

「お似合いよ」


 口調が強くなり、私は口元を押さえた。キュネは少し悩んだあと「仲間としては好きだけど、ねぇ……? 別に、そんな……」と口ごもった。


「私、シュトのことは仲間としてしか認識してないよ。この旅を共にしているみんなが大好き。もちろん、あなたも含めてね」


 キュネはまっすぐな眼差しでこちらを見た。

 下世話な考えをしていた私は、恥ずかしくて居た堪れなくなる。


「もうすぐで魔王のアジトに到着して、この旅は幕を下ろす。それまで、共に頑張ろう」


 空気を変えたいのか、キュネが手を差し出してきた。私もその手に応じる。

 手のひらは豆ができていて硬かった。

 それが、私の柔い皮膚の軟弱さを如実に表していて、どうしようもなく惨めな気持ちになった。

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