第3話
◇
それから、とんとん拍子に進んだ。
魔王が住み着いているという城へ向かう途中、魔王の手下たちと戦ったり、道中で出会った弓使いのキュネや、大剣使いのゴルラさんと巡り合った。
仲間が増えるにつれ、私たちの絆は深まっていった。
特に同じ女性のキュネとは仲良くなった。彼女の生い立ちや、私とトレムくんたちとの出会いを語ったりした。
「お似合いよね、二人」
たまたま寄った街でぶらぶらと息抜きをしていた時。
キュネがふとした拍子に、そう呟いた。
私は歩みを止めて固まった。「どっちと?」とは咄嗟に言えなかった。 ゴルラさんは既婚者だ。となると、選択肢は二人しかいない。
キュネは固まった私を見てきょとんとした。「どうしたの?」と言われ、首を横に振った。
「えっと、何がお似合いなの?」
「何って……トレムとアンヘラのことよ」
キュネが肩を竦めて笑った。ツインテールが動きに合わせて揺れる。
「だって、魔王に連れ攫われたあなたを、トレムが助けたんでしょう? まるで、おとぎ話みたいじゃない。素敵ねぇ」
その場にはシュトくんもいたのだ。だから、私とシュトくんが「お似合い」で「おとぎ話みたい」でも良いはずだ。
なのに、やっぱり私に「お似合い」はトレムくんになる。
なんだかその決められた道筋に、何も言えないままぼんやりとしてしまった。
「そ、そう?」
「うん、二人ってすごく相性がいい。正義感の強いトレムと、淑女なあなた。まるで運命よ」
キュネが笑った。笑顔が眩しくて、思わず目を瞑りたくなった。
きっと、シュトくんにお似合いなのはキュネのような女性なのだろう。
元気で、明るくて。男に頼らずとも生きていけると言いたげな凛々しい姿は、父の加護の元で暮らしてきた甘ちゃんな私とは大違いだ。
こういう二人が結ばれる物語の方が、好まれるに決まっている。
そう、相場が決まっているのだ。
「キュネは」
「え?」
「シュトくんのこと、好き?」
問われたキュネは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。私は続けた。
「だって二人も、お似合いじゃない」
「えぇ? そうかな? 私、ガサツだし……」
「お似合いよ」
口調が強くなり、私は口元を押さえた。キュネは少し悩んだあと「仲間としては好きだけど、ねぇ……? 別に、そんな……」と口ごもった。
「私、シュトのことは仲間としてしか認識してないよ。この旅を共にしているみんなが大好き。もちろん、あなたも含めてね」
キュネはまっすぐな眼差しでこちらを見た。
下世話な考えをしていた私は、恥ずかしくて居た堪れなくなる。
「もうすぐで魔王のアジトに到着して、この旅は幕を下ろす。それまで、共に頑張ろう」
空気を変えたいのか、キュネが手を差し出してきた。私もその手に応じる。
手のひらは豆ができていて硬かった。
それが、私の柔い皮膚の軟弱さを如実に表していて、どうしようもなく惨めな気持ちになった。
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