第2話


 それから私たちは村へ帰った。

 村長である父が私を抱きしめ、わんわんと泣いていた。

 魔王に襲われた村は荒れていた。建物は壊れ、一部の家は焼けた跡さえあった。


「勇者よ、魔王を倒してくれないか」


 トレムくんたちに、父が震える声でそう告げた。その言葉を聞いたトレムくんは胸をドンと叩き「任せてよ」と明るく言い放った。

 ふと、視線が注がれていることに気がつく。

 父へ視線を投げると、彼がおもむろに口を開いた。


「アンヘラは治癒師なんだ。ぜひ、冒険に連れて行ってやってくれないか」


 なんとまぁ勝手なことを。しかし物語上、パーティーに私が加わるのは不自然では無い。

 私は控えめで穏やかな笑顔を作り「私でよければ、是非」と返した。

 ここで拒絶をしたらどうなるのだろうか、と冷静な脳みその片隅で考える。

 ヒロインが参加しない魔王討伐のファンタジーなんて、味気ないに決まっている。

 それに、父の周りにいた村のみんなの視線も痛かった。

 ここで冒険へは参加しないと断言すれば、魔法を使えるくせに村を襲った魔王を倒す気概もない腑抜けだと思われるだろう。

 そうすれば、村に居づらくなるし、父の顔に泥を塗ってしまう。

 面倒くさいなぁと思いながらも、私はシュトくんをチラリと見た。

 彼は最初に会った時と変わらない表情でこちらを見ていた。

 ────シュトくんと一緒にいることができるのなら、それだけでおつりが来る。


「よし、じゃあ今日から仲間だな!」


 ニコッと笑ったトレムくんに、私も肩を竦めて微笑む。

 暑苦しいその笑みを掻き消すような、涼しげなシュトくんの微笑みを盗み見し、高鳴る心臓の音を抑えた。

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