第5話 覚醒――選ばれた武器は、拳だった
意識が、浮上する。
重い。
だが、確かだ。
「……まだ……生きてるな……」
一真は、ゆっくりと目を開けた。
天井はない。
森の奥、倒れた木の根元。
自分は、巨大な魔物の死骸のそばで横たわっていた。
体は――正直、ボロボロだった。
骨は繋がったが、痛みは残る。
内臓の奥が、鈍く熱を持っている。
《称号:死を越えた者》
《効果:致死的状況下での成長補正・大》
「……後から来るタイプかよ」
苦笑しながら、上体を起こす。
その瞬間――
地面に突き刺さっていた“何か”が、目に入った。
それは、剣でも斧でもなかった。
灰色の結晶で出来た、
二つの手甲(ガントレット)。
ボス――《灰喰らいの巨獣》の核が、
形を変えたものだった。
《武器生成を確認》
《名称:灰喰らいの手甲》
《種別:素手武器(適応者限定)》
「……俺専用、ってやつか」
一真が、そっと手甲に触れた瞬間。
――ズン。
心臓が、一拍、強く打った。
手甲が、溶けるように腕へと絡みつく。
拒絶は、ない。
違和感も、ない。
「……重くない」
それどころか――
拳が、軽い。
《武器同調:完了》
《効果》
・《身体強化・常時》大幅上昇
・《衝撃変換》付与
・《破壊耐性》付与
「殴った衝撃を……返す、か」
一真は、立ち上がる。
ふらつきはない。
一歩。
地面が、沈んだ。
「……は?」
力を入れただけで、
地面が割れる。
だが、制御できる。
暴走はしていない。
その時――
空気が、震えた。
《魔法覚醒条件を満たしました》
《個体固有魔法を解放します》
一真は、息を呑んだ。
「固有……?」
覚醒魔法
《生存闘争(サバイバル・インスティンクト)》
効果:
戦闘中、致死に近づくほど、
・身体能力
・魔力出力
・反応速度
が段階的に上昇する。
※回復・安全時には解除
※戦闘終了後、強烈な反動あり
「……ふざけてる」
だが、笑った。
「最高だ」
安全な場所では、強くならない。
死に近づいた時だけ、牙を剥く。
それは――
病室で、死と向き合い続けた一真の、生き方そのものだった。
試し打ち
一真は、近くの岩を見据える。
「……軽く、な」
拳を引き、
魔力を、ほんの少し。
「――はっ!」
拳が、空気を割る。
次の瞬間。
岩が、消えた。
爆発ではない。
粉砕でもない。
存在そのものが、砕け散った。
「……威力、過剰だな」
だが、同時に――
膝が、がくりと落ちる。
「っ……!」
息が、荒れる。
心拍が、跳ね上がる。
《反動発生》
《生命力消耗:大》
「……これが、代償か」
だが、恐怖はない。
使いどころを、選べばいい。
一真は、拳を見つめる。
剣はいらない。
魔法杖もいらない。
「……俺は」
拳を、握りしめた。
「この体で、殴って、生き残る」
遠くで、
新たな魔物の咆哮が、響く。
世界は、彼を歓迎していない。
だが――
試している。
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