第13話 卒業前の夜

卒業式を目前に控えた夜、二人は海辺に並んで座っていた。

 冬の海は静かで、冷たい風が頬を撫でる。


「もうすぐ、卒業だね」


 薫が言う。


「あっという間だったな」


 制服で過ごす時間が、残り少ないことを、改めて実感する。


「進学先、同じでよかった」


「俺も」


 同じ大学。

 同じ街。

 それだけで、未来が少し明るく感じられた。


 蓮は、薫の横顔を見る。

 照れたようで、でも真剣な表情。


「高校生活で、一番よかったことってなに?」


 少し考えてから、蓮は答える。


「……薫に出会えたこと」


 薫は一瞬黙り、それから、静かに笑った。


「私も」


 夜の海は何も語らない。

 けれど、この時間が、確かに心に刻まれていることだけは分かった。

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