第7話 初めてのデート
「付き合う」という言葉は交わしたものの、翌日の学校は驚くほど、昨日までと変わらなかった。
教室では、互いに苗字で呼び合い、特別に視線を交わすこともしない。
それが少し寂しくて、でも同時に安心でもあった。
放課後、校門を出たところで、薫が小さく立ち止まる。
「……ねえ、伊東くん」
「なに?」
「今週の土曜、空いてる?」
その一言で、胸が少し跳ねた。
「空いてるけど」
「じゃあ……その、一緒に出かけない?」
視線を合わせないまま言う薫の声は、わずかに震えていた。
「……行こう」
それだけで十分だった。
土曜日。
海辺の街の小さな駅前で、二人は待ち合わせた。
私服の薫は、制服のときより少し大人びて見えて、蓮は一瞬、言葉を失った。
「……似合ってる」
「えっ……ありがとう」
照れたように笑うその表情に、胸が締めつけられる。
特別な場所に行くわけじゃない。
海沿いを歩き、カフェに入り、同じ景色を眺める。
それだけなのに、すべてが新鮮だった。
「不思議だね」
カップを両手で包みながら、薫が言う。
「何が?」
「一緒にいるのは前と同じなのに……ちょっと違う」
「……俺も思ってた」
恋人、という言葉が、まだ身体に馴染まない。
けれど、確かに、関係は変わっていた。
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