5.初期装備は拳です

俺は今、ディナ、そしてアウリスと共に、道を辿っている。


「シンイチ、この森を抜けたら、どこに向かうかは決まっているのか。」


どこに向かうか。

確かに、次に考えるべきはそれだ。

一応、俺は異世界人だし、ディナはまだ謎の少女って感じだし……


街へ向かえば、この世界について、いろいろ学べるだろう。

ただ、一番知りたいのは……


異世界から、地球へ帰る方法だ。


あの路地裏の謎の声。

あいつがきっと鍵を握っている。

そいつに会うか、はたまたそれに繋がる文献の発見。

それを達成するには、人の多い街へ行く、これが一番早いだろう。


「しんいち、どうしたの?考え事?」


ディナについてもだ。

こいつは本当に、謎が多すぎる。

あの強さ、そして記憶喪失。

山賊に襲われるような状況になった原因もわからない。

ディナについて知る、それが第二目標って感じだな。

……ちょっと考えすぎたな。


「すまん、考え事をしてた。どこに向かうかだったよな。とりあえず……近くの街へ行きたい。」


「わかった。近くの街なら……リディリアがいいだろう。あそこは宿も多い。旅人には最適だ。」


旅人……ではないけど、宿があるのはいいな。

食料も調達できそうだし、地べたで寝ずに済む。

何なら、今すぐ飯を食べたい。

もう日も落ちそうだし。


「ここからだと、リディリアへはどのくらいで着くんだ?」


まぁ、遅くて明日には着けば……

「――3日はかかる。」

「なっ!?」


3日……3日。

確かにそうか。

車もない、道も完璧に整備されているわけではない。

前の世界は、移動手段が豊富だったと、改めて認識させられたよ……


「魔法を使える者がいれば、もっと速く着くんだが。あいにく魔法はさっぱりでな。」


魔法!

やはりあるんだな。

火球を飛ばしたり、凍らしたり……

一度見てみたいとは思っていた。

前の世界では、種も仕掛けもあるマジックならあったが。

街へ着いたら、魔法使いの一人や二人、いるんだろうか。


また考え事をしていたら、アウリスが何か聞き耳を立て始めた。

そして、あの時と同じように、剣を抜いた。


「シンイチ、構えろ。」


「あ、ああ。」


構えろって、そりゃどうして……

すると、ディナが息をひそめながら、そっと俺にこう伝えた。


「わるいひとたち、くるよ。」


もしかして……

山賊――


「――伏せろ!!」


アウリスの怒号と同時に、俺は反射的に地面へ身を投げた。

次の瞬間、頭上を何かが通りすぎた。

それが木に当たった瞬間、小枝が折れるように、木は真っ二つに切断された。


今の何かを表現するなら、飛んでくる死だ。

伏せなかったら、俺の体も真っ二つだった。


道の左右から、数人の人影が見える。

そいつらの中には、見覚えのあるやつもいた。


あの山賊だ。


「シンイチ、ディナを守れるか。」

「ああ、任せろ。」


どっちかというと、守られる側なんですけど!

そんなこと、口が裂けても言えない。


「そこそこの魔剣士が一人、普通の剣士が三人か。」


さっき俺に、やべぇ斬撃を飛ばしてきたやつ。

そいつがあの魔剣士とかいうやつか。


「魔剣士は私が片付ける。シンイチ、あの三人は任せたぞ――」


そういった瞬間、アウリスは前方へ跳躍した。

速すぎる。

100m走だったら、間違いなく世界記録級の速度だ。


「おい、そこのお前。そのガキを渡せ。」


さっきの盗賊たちだ。

やはり、ディナ狙いか。


「ノートス様を殺しやがって。ただじゃ済まねえぞ?」


うーん、恨まれている。

あの赤髪のことだろうな。


「しんいち、この人たち、危険?」

「ああ、危険だ。」


ディナが強いことは、アウリスに知られたらまずいよな。

アウリスは今戦っている。

その隙に、ディナに倒してもらおう。


「ディナ、いけるか?」

「うん。まかせて。」


「お喋りはもう終わりか?ははっ!」

「俺達に関わった事、後悔させてや――」


――あ。

山賊が何か言い終わるまでに、ディナの攻撃が腹へ届く。

一人、また一人と、三人を一瞬で殺してしまった。

敵が喋っている間に、殺してしまうなんて。

お約束というやつは、本当の戦いにはないんだな。


そういや、アウリスは……


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『無知全能』と凡人の俺~何も知らない全能者と、異世界で偉業を成し遂げたい~ 奇怪な機械 @Kikainakikai

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