第6話 綿花姫は濁流で兵を失う

 翌朝、王都に向けて進軍を再開をしたけど、道中強い雨に見舞われた。


 うちの国にではこんな雨、中々降らないから、とても羨ましい。


 兵達も習慣なのか、雨水を自分の水筒や兜等に溜めている者を多く見かけた。


 進軍速度は落ちていないから指摘しないけど、敵地で兜を脱いで水を溜めるって油断し過ぎだと思うわよ?


 まあ、今は敵の姿も無いから五月蝿く言わない事にしたけど。



 その後も雨は続いた。

 季節外れの日照りが終わって、完全に雨季に入ったのだろうか?


 我が国ではどうなんだろう?

 同じ様に雨が降っているのかな?


 国許を離れている私には解らないけど、降っていたらいいな。


 このぐらいの纏まった雨が我が国でも確り降ってくれて、ちゃんと貯水湖を整備して、国策も確りしていれば、こうして人様の土地を奪おうとする事なんて無いのに。


 歴代の愚王とクソ親父と愚兄のせいだ。


 なんで、私が好きな人の国に攻め込まないといけないのよ。


 そんな風に思いながら行軍を続けていると、向こう岸に渡る橋が壊されていて、この連日の雨で少し増水している川に辿り着いた。


 斥候が確認した所、川幅と水深が少し広いが、対岸に敵兵もいないので、渡河は問題無く可能だと言う事だ。


 それならば私達は先に進まないといけない。


 少し迷ったけど、渡河する事にした。


 先遣隊が向こう岸へ渡り、縄を何本か張って、より渡河しやすくした所で、まずは兵に安全に渡河出来る事を見せる為に私達が馬に乗って川を渡る。


 私達が渡り終えたので、他の兵達や物資を運ぶ為に渡河を開始した時だった。


 川上の方から大きな音と振動が伝わって来る。


「か、川が氾濫したぞ!

 巻き込まれるぞ! 早く川から上がれ!」


 誰かが叫んだ。


 しかし、無情にも物凄い勢いで流れて来た濁流に渡河中の我が軍が飲み込まれて行く。


 私達がいる岸は、幸いにも川より高台に位置しているので被害は無かったが、元いた岸は此処よりも低い位置にあったので、渡河前の部隊も溢れた濁流に呑まれてしまった。


 今、私の周りには千人程度の兵しかいない。


 物資も全て流され、国に戻ろうにも川がこの様子では戻る事も叶わない。


 降り頻る雨の中、空を見上げる事しか出来なかった。

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