第3話 成り上がりが割に合わなくなる社会


これまでの社会では、

「成り上がった人」が強かった。


金を稼いだ人。

権力を握った人。

名前を売った人。


多少ズルをしても、

多少人を踏みつけても、

勝てば正義だった。


でもAI社会では、

この構造が静かに壊れていく。



理由は単純だ。


ズルは、コストが高い。


AIが入ると、

抜け道はどんどん塞がれる。


金融、契約、行動履歴、発言。

すべてがログとして残り、

あとから検証できる。


「バレなきゃOK」は、

もはや成立しない。



犯罪も同じだ。


衝動的な行動。

短期的な利益。

その場しのぎの成功。


AI社会では、

割に合わない選択になる。


捕まるから、ではない。

捕まらなくても、

“信用スコア”のようなものが

静かに削れていく。


一発逆転より、

一生ジワジワ不利になる。



ここで逆転が起きる。


これまで「弱い」とされてきた人が、

相対的に強くなる。


・欲が少ない

・無理をしない

・争わない

・生活コストが低い


そもそも勝つ必要がない人たちだ。


彼らは、

競争に負けないのではなく、

競争に巻き込まれない。



成り上がりを目指す人は、

常に不安だ。


もっと稼がなきゃ。

もっと上に行かなきゃ。

今の自分じゃ足りない。


AIは、その不安を解消しない。

むしろ増幅させる。


比較対象が増え、

可視化が進み、

「負け」がはっきり見えるからだ。



一方で、

生きてるだけでまあ満足な人は、

AIと相性がいい。


・最低限が確保される

・効率化で負担が減る

・他人と比べなくていい


この人たちは、

社会にとっても扱いやすい。


暴れない。

要求しすぎない。

壊れにくい。


冷たい言い方をすれば、

社会コストが低い人だ。



だから未来は、

こういう人が生きやすくなる。


・成功しなくてもいい

・注目されなくてもいい

・勝たなくてもいい


「普通でいい」ではなく、

「満足でいられる」人。



これはディストピアの話じゃない。


競争がなくなるわけでも、

野心が否定されるわけでもない。


ただ、

成り上がりが

ハイリスク・ローリターンになるだけだ。



AI社会では、

静かな人が得をする。


強い人より、

賢い人より、


力を抜ける人が

最後まで残る。

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