第14話
「……正直に言おう」
会議室に、重い沈黙が落ちていた。
机の中央に置かれているのは、
最新の行動報告書。
セシル・アルノルト。
エリオ・フェルナー。
二人分。
「これは――想定外だ」
最初に口を開いたのは、戦術科の主任だった。
「制限付き実戦。情報遮断、行動制約、即時介入体制」
条件は、完璧だったはずだ。
「それで?」
学院長が、淡々と促す。
「……勝ちました」
報告役が、苦々しく言う。
「正確には、突破されました」
資料が、配られる。
開始三分。
監視魔法、無効化。
五分。
想定ルート外からの侵入。
七分。
模擬目標、完全制圧。
「火力行使、なし?」
「ありません」
「派手な魔法は?」
「使用記録なし」
誰かが、低く息を吐いた。
「……どうやって?」
「指揮です」
報告役は、はっきり言った。
「セシル・アルノルトが、状況把握・再配置・遮断を担当」
「エリオ・フェルナーは?」
「彼女の指示に、一切の無駄なく応じています」
沈黙。
「命令口調ではない」
「はい」
「威圧も、強制も?」
「ありません。むしろ……」
報告役は、言葉を選んでから続けた。
「信頼が前提にある動きです」
誰かが、頭を抱えた。
「つまり……」
「はい」
「崩せない」
学院長が、ゆっくり頷く。
「ペアで完成している。片方を止めても、意味がない」
「囲い込めば?」
「反発はしません。従います」
「なら――」
「ただし」
学院長は、視線を落とした。
「期待通りには、動かない」
その一言で、全員が理解した。
従順。
協力的。
問題行動なし。
だが。
学園の物語に、参加していない。
「……失敗だな」
誰かが、呟いた。
「はい」
学院長は、認めた。
「彼らは、学園で育てる存在ではなかった」
資料の最後のページ。
備考欄に、赤字で書かれている。
――長期的監視推奨。
――関与は最小限に。
それは、事実上の白旗だった。
会議が終わり、
学院長は窓の外を見た。
中庭で、二人が並んで歩いている。
楽しそうでもなく、
警戒しているわけでもない。
ただ、自然体で。
「……選択を、間違えたか」
呟きは、誰にも届かない。
学園が用意した舞台の外で、
二人はもう、次の場所を見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます