第13話
その知らせは、翌日の朝には学園中に広がっていた。
――セシル・アルノルトとエリオ・フェルナー。
今後のランク戦・模擬戦において、別枠管理対象とする。
正式通達。
掲示板に、堂々と張り出されている。
「……別枠?」
「危険視、ってことだよね?」
「ペアで、だよな……」
ざわめきが、広がる。
学年上位が指定されることは、稀にある。
だが、それは個人単位だ。
ペアでの別枠管理は、前例がない。
「……私たち?」
セシルは、掲示を見て首を傾げた。
困惑というより、純粋な疑問。
「……そうみたい」
エリオは、少しだけ表情を硬くする。
周囲の視線が、刺さる。
警戒と、好奇と、嫉妬。
混ざり合って、居心地が悪い。
「別に、悪いことしてないよね?」
「してないけど……」
エリオは、言葉を選ぶ。
「目立ちすぎた、んだと思う」
「ふーん」
セシルは、あまり気にしていない様子だ。
「じゃあ、これからも今まで通りでいいよね」
「……今まで通り、って」
エリオが、思わず聞き返す。
「ダンジョン行って、調整して、たまに模擬戦」
「うん」
何でもないことのように言う。
だが、それがもう、
学園の管理外に片足突っ込んでいる自覚はない。
教員会議室。
円卓の周りに、複数の教員が集まっていた。
「問題は火力ではない」
年配の教員が、資料を指で叩く。
「二人とも、突出していない。 それなのに、勝つ」
「いや、正確には……」
別の教員が、言葉を継ぐ。
「負けない、だな」
封殺。
無力化。
役割の奪取。
「セシル・アルノルトは、学年上位の実力を持つが―― 従来の型に当てはまらない」
「支援・指示・再配置。 だが、命令ではない」
「エリオ・フェルナーは?」
「素質はあるが、効率型ではない。だが、セシルがいると、最大化される」
沈黙。
「……危険だな」
誰かが、呟いた。
「問題は、二人が学園に従う理由がないことだ」
別の教員が、低く言う。
「野心もない。 名誉も求めない」
「ただ――」
資料の最後のページ。
二人の行動履歴。
「一貫して、二人で完結している」
その夜。
寮の部屋で、エリオは落ち着かない様子だった。
「……別枠ってさ」
「うん」
「多分、自由減ると思う」
「そっか」
セシルは、あっさりしている。
「でも」
少しだけ、間を置いて。
「エリオと一緒なら、どこでも同じだよ」
――また、それ。
「……そういうこと、簡単に言わないで」
「? だめ?」
「……だめじゃない、けど……」
エリオは、視線を逸らす。
照れと、焦りと、覚悟が混ざる。
「……俺さ」
小さく、続ける。
「多分、学園に目、付けられても―― セシルから離れる気、ないから」
セシルは、少しだけ目を丸くして。
それから、にっこり笑った。
「知ってる」
「……え?」
「だって、もう決めてるでしょ。二人で、最後まで行くって」
何気ない一言。
だが、それは。
学園の管理よりも、
ずっと重い宣言だった。
その頃。
別の場所で、ハルトは通達を握り潰していた。
「……囲い込む気か」
学園も、
自分も。
二人を、手放す気はない。
だが。
彼らは、もう――
誰の物でもなかった。
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