第9話






 ────…そして例のごとく、そんな私たちの仲裁にはいるのが、





 「…もう良い。離してやれ」


 「────チッ」





 低くて、どこか有無を言わせない、カーフェイさんの制止の声に、



 渾身の舌打ちを響かせたシルバーブルーの男が、くゆった自身の髪をガシガシ、引っ掻きながら


 いわれた通り離れていくと、





 「…甘ぇんだよお前も、コイツに。寝てるときどうせ引っ掻いちまうんだからわざわざ、おれがあの手この手でじかに、塗りたくってやるって言ってんのに」





 ・・・・・いや、





 「…「あの手この手って」、」


 「知りてぇか?」


 「いや結構」


 「即答すんなや」





 一矢いっし報いるような私の切り返しにはさすがの彼も、

 ピキリっ。と額に、青筋を立てた様子だったが。





 すんでのところで思いとどまったのか、眼前で殊更ことさら盛大に、ため息を放ってドカリ、と。





 (わざわざ)私の隣りに場所移動し、腰を下ろしたシルバーブルー頭の男(────もう、そう呼ぶことにする)は、


 背面のシートに背中を預け、長い脚を(絶対、わざとだ)こちらに、

 寄せつけるようにして組んで、煙草を吹かしだすもんだから、




 私も嫌がらせで、「…煙草ヤメテ臭い。喘息ぜんそく」と嫌味をブッ刺すことだけは忘れない。





 「うるせ。ぺたんこが。おれに指図すんな」なんて、いつものごとく

 小言は吐くものの。




 本当に、私に害成すことは彼は絶対、しないと分かっているので、大人しく

 持参したお昼ご飯を開封することにした。





 ・・・・・現に、隣の男は直ぐに、口に挟んでいた煙草を

 吸い殻に仕舞ってくれたし、





 (…と言うか。直ぐ、鎮火するんなら買うだけもったいない、と思わない事もない。けど、ヘビースモーカーらしいし)





 ・・・・ちょっとだけ、

 申し訳なく思わない事もない、ほんのちょっと。




 そう、ほんの一握りぐらいは、

 申し訳なく、・・・・





 「チッ。ほんっっっと女の風上にも置けねぇ、なンだよその乳は。萎えんだろーが男のブツが。もっと豊胸しようとか思わねェのか」



 「…」



 「ってかお前。いい加減、ブラジャー買えよブラジャー。25にもなって、スポーツブラとか胸がかわいそうだろ。だから貧乳なんじゃねーか」


 「っ失礼な、………。ぶ、ブラジャーはに、苦手。なの窮屈で」


 「ハァあ?お前、……マジで女か?性別詐称してんじゃねぇだろーな?胸のカタチ崩れるとか、フィットしねェとか色々あんだろ問題が」



 「……別に、無い。貧乳で困ったことないし」



 「オイ。いまの発言、世の中の男女引っくるめて敵に回してんぞ。ブラしてないとか、女の沽券こけんにかかわるから今すぐ、前言撤回しやがれ」



 「……常々おもうけど、そもそもなんで男のあなたが「女の沽券」を語るんですか」



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