第7話






 いや、

 ・・・・なんで私の考えてること分かるんだ、この人。





 そんな意図の含んだ目を、向けていたに違いない。





 若干、ギョッとした表情の私と視線がからみ合うとシルバーブルーの頭の彼は、

 不躾であるにもかかわらず。




 銀水晶のような、その美しい双眸で、私を見下し

 「テメぇーは判りやすいんだよ」と。一度だけむぎゅ、っと両頬を掴まれてしまった。





 「ぃっ…い、たぃ」


 「フッ。ブッサイクな面してんなぁ」


 「…じゃあ離してよ、」





 ペシペシ、無骨な指たちに挟まれた頬を助けるべく

 叩いてギブアップすれば割と

 すんなり、解放してくれたけれども。




 結構な力加減で掴まれたせいか、フェイスラインの頬骨あたりが、痛いし

 (ともかく)痛いわ。





 私、一応、女の子なんですけど?


 なぜいつも粗雑な扱いされるんだ、などなど心のなかではムッとする他ない。





 しかし、このまま堂々巡りではさすがに状況も動かないので



 さすさす、頬骨に手のひらを当てがってあげつつ「…名前、教えてもらっても良いですか」と再度、

 尋ねてみる事に。





 「リー・アーウェイだ」


 「え?」





 ・・・・・りー、

 あうぇい、・・・・away?


 え?なんて?

 私も日本人とは思っていなかったが。





 まさかの、がっつり外国籍の名前じゃないか。





 「…オ゛イ、二度も言わせんな。リー・アーウェイ、だ。わかったか?わかったな?覚えたな?」



 「え。いっ、いやちょちょちょっ、(そんな性急に覚えらんな、)待っ、…」


 「んで、コイツはウォン・カーフェイ」



 「……………はぁ、…はぁ?」





 あー、うぇい?かー、ふぇい?


 なんか『リムジン』とか、そーゆー高級な車種の呼称にありそうな変わった名だな。





 「……ぇ。なん、あの、なんて呼べば良いですか?」





 外国のお友だちを作ったこともなければ、海外に赴いたことすら、経験がないため

 どんな風に、呼ぶのが正解なんだろう?





 だって、絶対。


 この人たち私が想定している以上のお偉いさんである。事に

 違いないだろうし。





 ・・・・・・と言うか、

 えっ?



 今さらだけど良かったのか?


 こんな生意気な口聞いてて・・・・・。





 そうやって脳内が、勢いよく、

 ありったけの情報操作をしていくと理性が追いつき始め。





 自分の無知さかげんの対応の無礼さが、走馬灯のように

 一瞬にして、頭上を突っ走ったから。




 さすがの私も危惧の念が、足音を忍ばせてやって来ているように思う

 のはやむを得ない。





 しかし急にオドオドし出した、そんな態度の変動には、何を思ったのか。





 ぽすん────…。大きな手のひらが乗せられ、

 優しく髪を撫で下ろしながら「…今さら態度を急変されても困る。お前は、そのままでいい」と。




 思わず、口を噤んでしまうほどの真剣な声が降りかかったのには、

 齷齪あくせくしだした心も一旦、落ち着き払って安堵の息を、吐き出せた。



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