第4話






 私の苦い返答に「…そうか」と。ひと言だけ返した彼は、かけていたサングラスを

 流れるような所作で取り外すと、




 その猛烈ばかりな美形の顔の整い具合が、惜しげもなく

 あらわとなって、対峙することになった。





 いや、ほんとに・・・・・何度、対面しても、

 妙に肩に力がはいる、





 浮世離れをした、人外レベルの、美の際限すらないだろう。と言わしめるような。




 もはや、的確な言葉が見つからないほど。





 オールバックにされた、絹糸のようなグレーブラックの、髪。




 宝玉のように濃い、闇色の双眼アイズ


 左右対称に、完璧に配置されているのに、まったく見劣りしない

 目、鼻、紅を差したような薄い唇。





 玲瓏たる美貌はもちろんのことであるが、人間わざでは到底、


 あり得ない美の彫像のような恰幅が、

 高級スリーピーススーツの上からでも、窺い知れる。





 手足は長く、足を組んでいる様すら拝みたおしたい長身であろうことは、

 容易に、想像がつくだろう。





 この容姿で、天才的にIQも高いという。


 「天は二物を与えず」ということわざがあるけれど、ありったけ与えられている感じ。





 ────うん、正しくはIQに関しては、

 不躾な髪散らかし男のほうが上回る頭脳らしいが…。




 それにしたって、





 (…きっと、この人が脱いだら、世の女性たちは喜んで抱かれに行くと、────…否、脱がなくても。か)





 ス、と下ろされた闇色の瞳とともに、伏せられた長い睫毛の、もっと奥、────…




 どこか甘さを含んで、

 その硝子ガラス水晶のような双眼に、反射した私を映したので咄嗟に肩がびく、ん。と吊り上がってしまった。





 きっと絶対、おかしくおもわれたと思う。




 ただ、伏せられた宝石のような両眼と、直に、目が合っただけで

 ビクビクしてるんだから、





 ────…そんなことを頭でひとり会話しつつ、





 シルバーブルーの髪の、異様に美麗な男に、言われた(言われた通り。とは語弊があるが、)そのまま。




 私は毎週の診察手順のごとく、ジャンパーを脱ぎ、


 フードの毛皮ファーで隠れていた、首元を彼の前に晒した。





 「…あぁ、先週よりは赤み引いてんな。だいぶマシになってきたか。……で?今は?どっか気になる、とかあるか」


 「ぁ…、……えっと。時々あせも、みたいな痒みが。ちょっとだけ」


 「ソレ前にも言ってたな。見た目は蕁麻疹じんましんとか湿疹しっしんみてぇに表面上出てるワケじゃねーんだが、……ちょっと顔見せてみろ、」


 「っ、」



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