第2話魔法の世界
「ここが…警察署…」
思ったより大きい建物で、思わず見上げてしまう。
「こっちです 着いてきてください」
「あっはい」
警察の人の案内に従って署内を歩く。かなり広いらしく歩く距離も長い。窓から外を見るとその敷地の広さ、施設の多さがよくわかる。そして廊下を歩いてる時奥の方でガタイのいい男の人が若い女の子に引っ張られていた。服を見るにその子も警官らしい。男の人は手錠をかけられていたから逮捕された人だろう。それより気になるのはその人の背中だ。蜘蛛の足のようなものが4本、背中から生えている。そしてこちらに気づき大声で話し出す。
「お前ッ!俺の事撃ちやがったな?!こっちこい殺してやる!」
あたしの前にいる警察の人に話しているらしい。…あ、あたしをさっき襲った人か。たしかに撃たれてたね。
「…ん?」
犯人を見て少し違和感を覚えた。あの時なにも見れなかったから勘違いかもしれないけど。
「撃たれたんだよね…?」
たしかに時間はたってるし痛みはあまりないだろうけど、やけに暴れてる。あんな動いて大丈夫なのかな?襲ってきた人にそんな事考えるのもあれだけど。
「はいはい痛かったですねー」
そして違和感は拭えないまま、女の人に運ばれて行った。
「すいません お騒がせしました」
最後、女の子があたしに向かってそう言ってくれた。そしてまたしばらく歩いた後、少し狭めの部屋に案内された。
「ここで待っていてください」
そう言って警察の人は部屋を出ていった。やけに静かな、机と椅子があるだけの白い部屋。…なんか落ち着く。とか考えてたら結構直ぐにドアが開いた。
「失礼します 事情聴取です浅野さん」
さっきの女の子が入ってきた。…え?なんで名前知って…あそういえば名札してたなあたし。
「担当の
「はい…お願いします」
「とはいえそんな事聞くことないんだけど…」
小さい声でなんかいいながら手元の紙を捲っている。事情聴取とか初めてだから緊張するな…いや怖いのか?もうわかんないや。
「えー浅野由奈さんね 年齢は…」
「20歳です」
紙をとあたしの顔を交互に見て話し出す。何聞かれるんだろうとソワソワしてしまう。さっきまで落ち着くと感じていた部屋が急に少し落ち着かない空間に思えてきた。
「路地裏とか明らか危ないでしょ?なんであんなとこいたの?」
「あ〜…それは…」
あんなこと言って信じてもらえるのだろうか。いやさっきあの見た目の犯人平然と相手してたから信じて貰えそうだけど怖いなぁ。でも言うしかない。よし。
「なんか家出ようとしてドア開けたらあんなとこにいて…それで広いとこに出ようとしたらあんなことに…」
「ああなるほどねぇ…」
なるほどなんだ。そうなんだ。納得しちゃうんだ。いやまあそんな気はしたけどね。どうなってんだこの世界。
「家からだよね?」
「はい…」
「家はどこにあんの?」
「東京都練馬区のマンションです…」
「東京ね…東京?」
あやっばそうじゃんここ異世界だよ。東京とか言って分かるわけ
「浅野さん東京から来たの?!」
分かってるぽいなぁ…。もうわけわかんないよ…。
「ちょ黒瀬先輩!この人なんですけどー!…」
言ってしまった。黒瀬?って人に話しかけてたけど…。異世界に来て真っ先に警察にお世話になるってどういうことよ…。あ声する。来たかな?
「やっぱか」
「気づいてたなら先言ってくださいよ…」
話しながらまた入ってきた。水野さんとあたしを案内してくれた男の警察の人。多分この人が黒瀬さんなのだろう。すると黒瀬さんが口を開く。
「浅野さん もうわかってると思うけど…」
「はい…」
「異世界転生 しちゃったらしいね」
「はいぃ…」
とうとう確定してしまった。転生が。
「ここは…どういう…?」
「ここは異世界 と言ってもパッと見じゃ変な人がいるだけで元の世界と同じ感じですが…」
少し興奮する自分もいるが、やっぱり不安が勝ってしまう。
「この世界は魔法が当たり前の世界 使えない者は極端に扱いが酷くなります。つまり魔法が全て世界です。」
と、水野さんの説明を聞いて今度は焦りがきた。魔法が全ての世界?あたしヤバくない?魔法使えないどころか知らないんだけど。
「俺らも使えないんだけどな」
え?使えない?しかも 俺ら って…黒瀬さんと水野さんが?
「私達はこの魔法が全て世界で警察として働く魔法が使えない人間」
「魔法が使えない人間に対する差別を無くすために作られた適当な組織ってわけさ」
なんか…自分の事とは思えないくらい可哀想な事情だったよ…
「浅野さん」
「えっはい」
水野さんがまっすぐ目を見て言ってきた。
「私たちと一緒に働きませんか?」
勧誘。たしかに、ここは魔法が全て世界で魔法が使えない人達のための場所。こんなことになってしまったあたしを誘うのは必然。
「でもあたし…警察に必要そうなスキルなんてないし…何よりこの世界に来たばかりだし…」
それでも今まで感じていた不安はずっと消えない。知らない環境に心の準備なしで飛び込んでしまうこの怖さ。これから自分がどうなってしまうのかという疑問。色んなことを考えてしまう。
「これから慣れればいいんです 私達もそうでしたから」
水野さんが不安を察したように優しく言ってくれた。そして「私達もそうでしたから」という言葉。やっぱりそうだ。この人達も元はあたしと同じ世界にいたんだ。あたしと同じで、ある日この世界に来ちゃったんだ。
「浅野さん?」 黙り込んでしまったあたしに首を傾げながら呼ぶ水野さん。あたしは、やらなきゃいけないと思った。やるしかないと思った。
「…やらせてください」
「浅野さん…!」
「あたしも!警察になりたいです!」 「もちろんです」 水野さんは優しく笑って、黒瀬さんも横で嬉しそうだった。
「特に訓練とか無しに説明だけしてもう仕事だけど、バディいるから大丈夫だよ」
…やっぱり不安かもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます