異世界落ちこぼれたちの警官生活

まめ田 とうふ

第1話転生しちゃった朝

「ん…ふぁ…もう朝かぁ やっぱり朝は弱いなぁ」

「…起きなきゃ」

寒い中いやいやベッドから降りる。

「つめたッ」

着替えようとするけど服が冷たい。

ご飯を食べたり顔を洗ったりして出かける準備をする。

最後に「浅野由奈あさのゆな」と書かれた名札を首にかける。

「よしっ 気合十分!」

靴を履いてドアノブに手をかける

「いってきまーす」

ドアを開けていつもの廊下に出る。


…はずだったのに


「…へ?」

どこですかここ。てか暗っ え路地裏?

全く知らない場所に出て混乱する。

「も…戻ろう そうしよう」

冬のはずなのに汗をかきながら後ろを振り向く。

「…え?…ない」

「ない!ドアがない! あたしここから来たよね?!なんでないの?!」

さっき開けたはずのドアがない。いやある方がおかしいんだけど。周りを見てもどこにもない。自分の声が無慈悲に響く。

「えっどっ…どうしよ」

色んな考えが頭の中でぐるぐるする。

ここはどこなのか。

ドアはどこ行ったのか。

まずなんでこうなったのか。

考えれば考えるほど謎が深まり頭がどうにかなりそうになる。やばい。

「い、いや…落ち着け…落ち着くのよ浅野由奈…」

胸を軽く叩き無理矢理自分を落ち着かせる。

「とりあえず広いとこに…路地裏から出よう」

辺りを見渡して道を探す。

「あっち…明るい」

おそらくここから出られるであろう道を進む。自然と小走りになる。そんな焦ってんのかあたし。そりゃそうか。

「もう少しで…!」

あと少しで路地裏を抜けられそうな時、突然後ろから強く引っ張られた。

「うっ?!」

そして気づいたら宙に浮いていた。体は固定されて動かない。怖いどころじゃない。何が起こってるのかが全く分からない。そしたら後ろから声が聞こえてきた。

「こんなとこに1人は危ねぇだろ姉ちゃん 落とされたくなきゃ金出しな」

振り向けないので声だけが聞こえより怖い。そして金を出そうにも動けない。

心臓がバクバク言ってる。どんどん早まる。怖くて声も出ない。

誰か助けて!

そう叫びたかった。思うことしかできない。怖くて涙が止まらない。

「無視かよ?落とされてぇのか?」

「い…いや…ぁ」

「なら金出せっつってんだろ!」

助けて

「早くしろ!落とすぞ!」

助けて!


「止まれ強盗犯!」


もう一人、別の男の人の声が聞こえてきた。

「警察…?!なんでここに…!」

「現行犯だ お前を逮捕する」

警察?警察って言った?助かる?あたし助かるの?

「来るな!この女殺すぞ!」

あ、非常にまずい。怖すぎる。さっきより脅し酷くなってるし。

「来るなァ!!」

犯人っぽい人が叫ぶ。それと同時に警察の人が銃を撃つ。

「ッああああ!」

弾が当たったのか犯人っぽい人がまた叫ぶ。警察の人はそれを見て近寄って行く。

「逮捕だ 馬鹿野郎」

そう言ったのを聞いてまだ涙が止まらなかった。安堵で体の力が抜けていくのがはっきりわかる。

「助かっ」

口からそう言おうとした瞬間、あたしの体は動いてた。つまり落ちていた。結構な高さから。突然過ぎて声も出なかった。地面がすごい速さで近づいてくる。あ、死んだ。




…生きてる?なんで?

「…すか?」

「大丈夫ですか?」

「…え?」

ゆっくり目が自然と開く。警察の人の顔が近くにある。助かったんだ。助けられたんだ。この人に。まだ泣いてるのか、視界が涙でぼやけてる。

「大丈夫ですか?」

「はい…うぅ…」

また涙が出てくる。脱水になりそうなくらい出てくる。声も涙も止まらない。返事したら大声で泣いちゃった。怖かった。本当に死ぬかと思った。

「立てますか?」

「はい…」

顔をぐしゃぐしゃにしながら返事をする。フラフラになりながら、産まれたての小鹿みたいに震えながら起き上がる。

「歩けますか?外に出ますよ」

ゆっくり、1歩ずつ、鞄を抱きしめながら歩く。路地裏から出て光が目に飛び込んでくる。

「まぶしっ」

だんだん慣れてきてゆっくり目を開ける。そして見えた景色はその目を疑いたくなるものだった。

「へ?え?」

獣の耳やしっぽが生えてる人、角が生えてる人、なんなら飛んでる人もいる。普通の人もいるけど、なんか違う。

「これはもしや…異世界転生?!…にしては都会すぎない??」

今までアニメや漫画で見てきたことに興奮する。ただいちばんの違和感。

「異世界ってもっと中世とかそういう感じじゃないの?!」

都会すぎる。今まで住んでた東京と見間違えるくらい。一瞬残念と思ったがよく考えたらこっちの方がいいな。

「何にそんな…ああ、なるほど」

「え?」

警察の人はなんかに納得したようなことを言ってたけどよく聞こえなかった。

「まあ話は署で 移動しますよ」

変わった見た目のスポーツカー的なパトカーに乗せられ、警察署?に向かう。

こうしてあたしの異世界生活が、クセの強い感じで始まった。




おまけ 〜side元の世界〜

ニュースキャスター

「現在、全国各地で相次いでいる行方不明事件ですが、

警察の発表によりますと、現在行方不明となっているのは、

黒瀬功一くろせこういちさん(34)

水野みずのひかりさん(20)

牧村颯馬まきむらそうまさん(20)

神崎澪かんざきみおさん(29)

そして新たに、

浅野由奈あさのゆなさん(20)が行方不明になっていることが分かりました。

この件について、警察は…」










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る