第2話 ドラゴン嫌い

「生き延びた……のか」


竜王の座から転落。

ドラゴンの聖域を旅立ち。

かつての借りを返すために飛んでいる際中で、私は上空より墜落してしまう。


正直、死ぬ確率の方が遥かに高いと思っていた。

だがなんとか、生き延びる事が出来た様だ。


「神に感謝……だな」


神が私の祈りを聞き届けてくれたのかは不明だが、何であろうと、生き延びられたのだから一応感謝はしておく。


「しかしここは……」


私は室内にいた。

壁や天井から察するに、木製の建物の様だ。

更に言うなら、私はベッドの上に寝かされている。


「誰かに拾われたという事か」


全身に包帯が巻いてあった。

それに傷の痛みもかなり治まっている。

墜落のダメージも含めて考えると、どうやらしっかりと治療してくれている様だ。


高位魔法。

もしくは、高価なポーション類を使った可能性が高いな。


「ふ……齢一万を超え、再び誰かに借りを作る事になろうとはな」


残された寿命は短い。

両方にきちんと返し切れるといいのだが。


「あ、お目覚めになられたんですね」


扉が開き、二人の人物が室内に入ってきた。

一人は少年で。

もう一人は白髪の老人だ。


声をかけてきたのは少年の方である。


「助けていただき、感謝する」


「いえ、困った時はお互い様ですから」


私の言葉には少年が応え、白髪の老人は一歩下がった場所で控えたままだ。

立ち位置や振る舞いから考えるに、少年が主人で、老人は従者の様だな。


従者を従える少年。

ぱっと思いつくのは貴族だが、それにしては身に着けている物が……


人間の世界については、勇者一行と行動をしたことで私は多くの知識を得ている――まあ五百年前の物ではあるが。

その最中に貴族と顔を合わせる事もあったが、そういう類の人間は、常に高級な衣類を常に身に纏っていた。


それに対して少年の身に着けている物は、清潔感こそあれ、作りの粗雑さが目立つ物だ。


貴族ではない?

いや、ひょっとしたら、アークの様に身だしなみに気にしないタイプの可能性もあるか。


勇者であったアークも貴族だったが、彼の格好は酷い物だった。

他のメンバーが言うには、アークがおかしいだけだそうだが……世の中は広い。

同じ様な感性の人間がいても、別におかしくはないだろう。


「僕の名は、アーク・ペンドラゴン」


「アーク……ペンドラゴン?」


少年の名乗った名に、私は驚く。

なぜなら、かつて共に魔王を倒した勇者である彼と全く同じ名だったからだ。


「その名は……勇者の……」


「はい。僕は一応、勇者アーク様の子孫って事になります」


アークの子孫。

しかも、同名の。


とんでもない偶然だな。

くしくも、私は同じ名の人間に二度救われた訳か。

こういうのを、運命というのかもな。


「私の名はドラメイドだ」


「素敵な名ですね」


「ああ、私はこの名を誇りに思っている」


「羨ましいです。僕は自分の名前が……正確には性の方があまり好きではないので」


「性?」


ペンドラゴンの性に、何か不満でもあるのだろうか?


「僕はその、ドラゴンが嫌いなんです。だから自分の性に、ドラゴンって入ってるのが嫌で……って、変な話をしちゃいました。すいません」


ドラゴンが嫌い、か。


「一体なぜドラゴンが嫌いなのか、聞かせて貰っても?」


「申し訳ありませんが、プライベートな事になりますので」


理由を聞いたら、それまで沈黙していた老従者が口を挟んで来た。

どうやら触れて欲しくない部分の様だ。


仕方ない。

気にはなるが、ここは一旦引いておこう。


「ドラメイドさんは、回復するまで暫くゆっくりしていってください。不自由が無いよう、出来る限り便宜は図りますので」


「……感謝する」


「あ、もしよかったら食事をお持ちします。どうしましょう」


「よろしく頼む」


「では、用意しますね」


少年――アークと、老従士が出ていく。

私の為の食事を用意するために。


「まいったな……」


恩返しに来たはずなのに、更に借りが増え。

しかもその対象は、ドラゴンが嫌いと来ている。

こうなると、私がドラゴンである事を名乗る訳にもいかない。


「だからと言って、恩返しを諦めるという訳にも……」


こうなっては仕方ないな。

このまま人間の振りをして、その状態で恩返しが出来ないかやってみるとしようか。

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