第2話
流刑島は、一枚岩ではなかった。
看守が死んだという事実は、瞬く間に島中を駆け巡る。
逃げ場はない。
時期的に海は荒れ、船は来ない。
だから彼らは選ぶ。
――従うか、逆らうか。
そんな時、響く声に皆が反応した。
「集まれ」
たった一言、マシロの声は大きくなかった。
だが、島の中心にある広場には、囚人たちが自然と集まっていた。
恐怖ではない。
間違いなく、期待だ。
「全員、ここで一度だけ選択しろ」
沈黙に風が吹き、鎖が鳴る。
「冤罪でここに来た者、前へ出ろ」
一瞬の逡巡。
だが、数人が、次第に、そして十数人が前へ出た。
窃盗犯として送られた元商人。
戦争の責任を押し付けられた元兵士。
権力者に睨まれた研究者。
告発しただけで消された役人。
目に宿るのは、諦めではない。
怒りと、それを抑える理性だ。
「よし」
マシロは頷いた。
「お前たちは同輩であるし、俺の部下だ」
全員の安堵の息が漏れた。
だが、すぐに空気が張り詰めた。
「次」
視線が、残った者たちに向く。
「まずは…小悪党。人を売って生き延びようとした奴。この地獄を楽しんでいた奴。名乗り出ろ」
数人が後ずさる。
特にマシロが見目麗しく、顔だけなら女顔だと舌舐めずりした連中はその迫力にビビる。
「それは、矯正出来ない馬鹿だ」
否定はしない。
事実だからだ。
「安心しろ。すぐ終わる」
干潮時の浜辺。
逃げ場のない、静かな砂地。
深く埋める必要はない。
潮が満ちれば、海が全てを持っていく。
それは処刑ではない。
教育だ。
この島では、理不尽に従うか、理不尽を壊すかしかない。
そして――壊す側に立てない者は、不要だ。
たったそれだけで、囚人たちは学んだ。
逆らえば死ぬのではない。
価値がなければ消されるのだと。
制圧は三日で終わった。
看守は全滅死。
記録庫は接収。
小悪党は浜辺の砂と化し。
性的異常者は開いた蛤のようだ。
ついでに食糧庫と船着き場は掌握。
冤罪組を中心に、最低限の秩序を敷く。
「ルールは一つだけだ」
マシロは言った。
「俺の邪魔をするな」
それだけで、島は静かになった。
夜になり、岩山の上でマシロは海を見下ろす。
「……次は」
視線は、水平線の向こう。
自分を嵌めた王国。
聖女。
王太子。
「俺を冤罪で終身刑にした連中だ」
拳を握る。
怒りはない。
復讐心すら、もう薄い。
あるのは――再編。
「壊すか。それとも、奪うか」
破壊帝は、静かに笑った。
王国はまだ知らない。
流刑島が――魔王の国になったことを
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