第2話 雪下ろしと番茶

もう少し早く訪ねられなかったものかと、寂玄じゃくげんは胸を痛めた。

今後の師と仰ぐ老僧は、既に歩くこともままならなかった。


「なんの、なんの。まだ雪も残る折、来てくだされただけで何よりじゃ」


笑み崩れた老住職、慧光えこうはそう言った。


だが、寂玄の胸の痛みは鎮まらなかった。

長い冬の間に積もった雪で、庫裡くり榑葺くれぶき屋根は傷んでいた。

頑丈な瓦葺きの本堂はまだ大丈夫だが、石で固定した庫裡の屋根は、明らかに取り替えが追いついていない。

屋根板は風雪に苛まれ、早急に替えないと雨漏りがしそうだった。


寂玄は入寺したその日から、本堂と庫裡の雪かきと屋根の補修に精を出した。

午前いっぱい雪を下ろしていると、寺女中てらじょちゅうのハツが、湯気の立つ番茶を持ってきた。

十六歳の僧侶は、その香ばしい熱い茶でようやく一息つく。


「すみません…私では手が回らなくて…」


そう申し訳なさそうに謝るハツに、寂玄はむしろ感服する。


確かに屋根は傷んではいた。

だが、雪の重みで潰れなかったのは、間違いなく彼女がその小さな身体で雪下ろしをしていたおかげだ。

彼は尊敬の念を込めて、首を振った。


「とんでもない、私は身体ばかりが大きいだけなので、これくらいしかお役に立てないんです」


大きな丸い目が、きょとんと彼を見つめた。

童女に見まごう無垢さだが、相手は寂玄と同い年である。

寂玄は伏目がちに微笑んだ。

馴れ馴れしくならぬよう、しかし安心感を与えるように。


「むしろ、本堂の仏様に奉仕できる、ありがたい務めです。ハツさんはどうぞ、和尚様のお傍にいて差し上げてください」


その間、私が屋根をしっかり致しますから、と寂玄は拳を握る。

尊い師僧が守り続けた仏法の地。

自分こそがその灯を守るのだという気概がみなぎった。


同い年の寺女中は、困ったような、しかし安心したように眉を下げた。

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