第2話 森の恵みは鉄の肺を癒す

「なあアンタ……見たところ“生身”っぽいが、マスクを着けずに平気なのか?」


 俺は男……半透明の少女によるとイツキに尋ねた。


「ああ、この空気ですね。俺も最初は驚きましたけど、ちょっと工夫したんですよ」


 イツキはそう言うと、また“植物生成”と唱えて、手に小さなものを産み出した。

 それは原色の不気味な色をして、綿毛のようなものが無数に生えている。


「“腐海植物”です。汚れた大気を取り込んで、浄化して吐き出す性質があります。これを肺に寄生させてるんです。まあ、原種だと毒性もあるんですけど、そこはちょっと品種改良を」


 驚愕した。そんなものがあれば人工肺なんて必要ない。

 俺がもっと早く彼に会っていれば……そう考えたとき、再び人工肺が不調を示した。


「うっ、ゴホッゴホッ……!」

「大丈夫ですか!」

「すまない……人工肺の具合が悪くてな。汚染が処理能力を上回ってるんだ」

「よければ、腐海植物をお分けしますよ」

「っ! いいのか!?」

「ええ。いくらでも生み出せますし。深呼吸して胞子を吸い込むだけですから」


 イツキの指示に従い、肺いっぱいに胞子を吸い込む。

 即座に効果は無いだろうが、体の中が清められた気がした。


「胞子が根付けば浄化機能が上がると思います。一日くらいですかね」

「助かる……食事といい、良くしてもらってばかりだ。何か俺に返せることはないか?」

「この街に来たばかりなんで、いろいろ知らないんですよ。なので教えてもらえると助かります。例えば、IDとか必要なんじゃないですか? もらい方とか聞きたいですね」

「ああ、それは確かに」


 不法滞在者は追放される。このスラム区もそんな彼らの隠れ家であり、イツキがこのままなら退去処分されるのは明らかだ。

 強欲な話だが俺はまだイツキの恩恵にあずかりたい。そのためなら多少法を犯そうが市民IDくらいは取ってやるつもりだ。


「おい、お前も協力しろよ」

「もちろん。また美味いドリンク飲みたいからな」

「あはは。あれでよければいくらでも」

「「気前が良すぎる! もっと警戒しろ!」」

「うわ、ハモった」


 俺と友人の意見は一致した。

 このお人よしを守らねばならぬ。

 例えば空の上の富裕層なんかからな。


『イツキ、わたしは果物がほしいです』

「あいよ。じゃあ“レインボーピーチ”とかいいかな」

『んん~! 美味です! 食べたことない味です!』


 言ってるそばからイツキは半透明の少女に何か与えている。

 ゴクリと喉が鳴るが、今はイツキの身分保障が先決だ。


「それじゃあ行政局に行くか。ついてきてくれ」

「ええ。よろしく。えっと……」

「ああ、名前まだだったな。俺はトオル」

「ゼルだ」

「イツキです。この子はディラ」

『ディラです!』




―――――――――――――――――――――――――――


美味植物は某マンガ参考です。完全再現でもいいけど全部覚えてないんで……

ほかにも創作植物は色んなとこからネタもってくる予定。

「アレか!」と楽しんでもらえたら幸い。

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