第3話 輝き

あの後。結局、東京郊外にある彼の住むアパートに一晩泊まることになった。だが私は後悔していない。なぜなら、彼の部屋だからだ。


長年探していた運命の人にようやく出会えて、しかもその彼の住む部屋に一晩泊まることに私はワクワクが抑えきれなかった。


私たちは電車に乗り、三十分かけて彼の住むアパートに向かった。暖房で暖かくなった座席を隣同士で座り、ゆったりと外の景色を眺めていた。


外の景色は幻想的で、私は思わず涙がこぼれそうになった。本当に今日は大変な一日だったけど人生で一番の宝物のようだ。


感動の余韻に浸っていると、ゆっくりと電車が減速していった。


「あすか、ここで降りるよ。」


まもるは私よりも早く立ち上がり、私に手を差し伸べて笑顔を見せた。


私は手をつかみ、重い腰を上げて立ち上がった。


最寄り駅につき、改札を出ると昼にいた街とは違う、落ち着いた雰囲気の街並みが辺り一面広がり、優しい明かりが星空のように辺りを照らしていた。


私たちは手をつないで街灯の明かりを浴びながら夜道を歩いた。夜道は冷たく、頬を刺すような痛みが少しずつ感じられる。


その時、私が歩いている先から冬の冷たい逆風が吹き、私は思わず目を塞いだ。都会とはいえ冬の夜風は寒い。


私が寒そうに震えていたらまもるは白い息を吐きながら私に話しかけた。


「もうすぐ着くからね、もう少しの辛抱だよ。」彼の優しい言葉に胸元がほっこりと暖かく感じた。そしてなぜか、甘酸っぱい痛みも感じた。


なぜこのような気持ちになるのか、嬉しいはずなのに……


終わってしまいそうで怖くて。そんな気持ちと、今ある幸せが混ざっていた。


そう考えているうちに彼の住むアパートに着いた。彼の住むアパートは砂ぼこりや泥で汚れていて少し年季の入った外観だった。ここら一帯、私の住む街と似ていて少し、懐かしさを感じた。


不思議な気持ちを感じながら私は階段を上がっていった。かすかな記憶だが、母の住んでいた家とよく似ている気がした。


既視感というものだろうか。

私は既視感で頭がいっぱいで、彼が立ち止まっていることに気が付かず、ぶつかってしまった。


「あはは、可愛いね。」

まるで子供に見ているような、そんな気がして私は不機嫌な顔をした。


彼は気まずそうに私を見つめた。

分かっているけど少し悔しい。負けたような、下に見られているような。


変なプライドが私を苦しめる。


ーーー


全てがひと段落した後、私は入浴後、もう日が変わる手前の時間に敷き布団の準備をしていた。彼は向こうの浴室で入浴していて、私は少しじれったさを感じていた。


それにしても外は凍てつく寒さに耐えていたが、ここは暖かく、落ち着く雰囲気に私は力が抜けた。


「こんな時間が永遠に続けばいいな……」

私は虚しさに本音を漏らした。


その時、頭にかすかな重さを感じた。

振り返ると、彼が私の頭に手を置いていた。


「まもるくん。」

私は無意識に彼の名前を呼んだ。すると彼は優しく私の頭をなでた。


強くなく、弱くも無い、思いやりのある強さで私の心は完全に奪われてしまった。


何かが吹っ切れたのか、私は涙がこぼれた。

もう何もかもどうでもよくなって、

「私、まもるくんとずっと、いつまでも一緒に居たい。私の人生の全て、貴方と、貴方のそばで永遠に暮らしていたい。」


私が本音を明かした瞬間、彼は私に口づけした。


「嬉しいよ、僕も。あすかと暮らせるなら何年、何十年ずっと……永遠に居たい。」


そう言い、私の頬にこぼれた涙をそっと指で拭いた。


私は、頬を赤らめながら、少し笑みを浮かべて思いを伝えることにした。


「まもるくん。私の一生のお願い……私と付き合ってください。」


その時、七色の光と共に爆発したようなおとが聞こえた。


窓の外を覗くとそこには無数の花火が打ち上げられていた。


「あはは、タイミングがいいね。そういえば今日は大晦日だったか。」


私は突然の出来事に戸惑いを隠せなかった。

すると彼は再び頭をなでて、


「一生のお願い、引き受けるよ。」

彼の発言が強く胸が締めつけて、最上級の嬉しさがこみ上げていた。


「そ、それって……」

私の問いの表情に優しくて、でも真剣な表情で私に話しかけた。


「お付き合いしてもいいって事だよ。」


私はその言葉を聞いて力が抜けて、膝から崩れ落ちた。


「あすか!?大丈夫か?」

慌てふためく彼に思わず笑いが止まらなくなってしまった。


彼もつられて笑ってしまった。


素敵な年明けだ……


ーーー


新しい年と共に、私たちは実家の神社に帰るため荷物をかばんに詰めていった。


「まもるくん!もう準備出来たよ!」

私は浴室にいる彼に大きく手を振った。


彼は焦りの表情を浮かべて、

「待ってよ、僕まだメイクの途中なんだけど!」と、必死にファンデーションを塗っていた。


私はその愛らしい姿に、少しときめき、

その思いと共に、天国にいる母に語りかけた

(お母さん、見ていますか?私はようやく運命の人と出会い、お付き合いをしました。そしてこれから幸せな毎日を送ります。どうか見守っていてください。)


「ごめん、待った?」

彼は申し訳なさそうに伝えて深く頭を下げた。私は彼の頭をなでて、言葉を返した。


「全然待っていないよ、さあ、行こう。」


これからどんな毎日が待っているのか。

きっと幸せだけじゃないけど、私たち二人なら乗り越えられる。


そう深く決心して、

玄関のドアノブをひねった。

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三世紀離れた二人の約束 春瓜れい。 @haruurirei

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