第5話 母から息子へ

「翔が異世界に連れ去られるのですか……」


信頼するクーマ様から話を聞きました。


私は信子……祖先に異世界人を持つ一族の娘です。


尤も『祖先に異世界人を持っている』それだけで今では大した能力も持っていません。


ただ、クーマ様の家系は預言者の家系。


だから、こう言った予言の能力が今もあるのです。


「うむ、だが、これは明らかに予言、自分で言うのもなんだが、絶対に外れない! 今から覚悟した方が良い」


「クーマ様、なにか回避の方法はないのですか?」


「うむ、残念だが、その方法は予言できなかった。回避の方法はない……そう考えた方がよい」


「そんな……」


ショックだった。


私の祖先から伝わる話しでは異世界は魔王が居て、魔族や竜が闊歩する世界。 この世界より凄く過酷な世界だ。


そんな世界に可愛いい息子を一人で行かせるなんて……


悲しくて仕方なかった。


「すまないね」


「それで、加護は、息子に女神イシュタス様の加護は宿るのでしょうか?」


「それは無理だ……我々は異世界イシュトリアから地球に転移してきた存在。恐らくは再度異世界に戻っても加護を与えて貰えることは無い……絶対ではないが『元から居た異世界人』として扱われ貰えることは無い」


「そんな……それじゃ翔は……」


「恐らく、真面に生活などは出来ない……」


「そうですか……」


だが、愛する息子の人生。


そう簡単に諦めなど出来ません。


◆◆◆


息子が異世界に連れ去られるまでの10年。


私は母親として異世界でも息子が生きられるように……そればかり考えて過ごしました。


『息子が異世界で生きられるようにする』その為に全てを賭けました。


散在する悪い妻。


宗教に嵌まった危ない妻。


そう言われても私は止まる事は出来ませんでした。


期間は10年。


その期間にどうにかしないと息子は死んでしまう。


だから……止まる事は出来ませんでした。


愛する旦那は、そんな私を見て幻滅し『お前は狂っている』そう言われて離婚もされました。


きっと言っても理解なんてして貰えない。


だから、言われるままに離婚しました。


『親権』それ以外は全部いうがままに……


翔には辛い思いをさせたかも知れません。


ですが……ごめんなさい……母さんね貴方に死んで貰いたくないの。


きっと、翔には悪い母親と目に映っているでしょう。


だけどね……貴方が異世界で苦しい思いをし死ぬ様な思いをする位なら母さんなんでもするわよ。


偽物の中から本物を探すのは凄く大変だけど母さん諦めないわよ。


途中でガンにかかっているのが分かったわ。


だけど、そんな事どうでもいいいの!


母さんね翔が心配なの……こんな物の治療にお金を使う位なら、翔の為に使わないと……


翔ごめんね……高校生になりたかったよね……だけど、翔は高校生に成れない……


16歳で異世界に行っちゃうから……美味しい物を食べさせてあげたかった。


遊園地、旅行にもつれて行ってあげられなかった……


ゴメンね。


だけどね、全部犠牲にしても母さん、翔に生きて貰いたかったの。


『母さん、翔の事が心配なの』


そしてゴメンね……


◆◆◆

翔へ


この手紙を貴方が読んでいると言う事は、母さんは死んじゃっているんでしょうね?


突然だけど、貴方は16歳の誕生日に『異世界イシュトリア』に転移されると思うの。


異世界に行くと女神様からギフトが貰えるんだけど、残念だけど翔は貰えない。


だからね、母さん異世界で翔が生きられるように頑張っていたのよ。


翔、母さんが居なくなっても、異世界に行っても強く生きるのよ。


愛しているわ。


               母、信子



◆◆◆


信子は死の直前まで翔を心配し、そして死んでいった。



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【カクヨム11(短)参加】母さんが宗教詐欺にあって地獄を見たと思っていたけど……えっ! 全部本当だったの!?  現実社会で地獄を見た少年は異世界で無双する! 石のやっさん @isinoyassan

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